断頭台の友よ

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ライト文芸

断頭台の友よ(58)

<<はじめから読む! <57話  四十か五十くらいの、恰幅のいい男だった。服の胸や腕周りの布が破れそうなほど突っ張っているのは、宗教者にしては珍しい。肥えに肥えた脂肪ではなく、鍛えられた筋肉でだ。  貴族の三男や四男の進路として、教会はそこ...
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断頭台の友よ(57)

<<はじめから読む! <56話  翌早朝、サンソン家に宿泊したオズヴァルトとともに馬車で出発した。最初は小回りのきく馬の予定だっただが、万が一クレマンの予想が正解だった場合、オズヴァルトが帰りも馬で帰ってこられるのか不安だったので、どうにか...
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断頭台の友よ(56)

<<はじめから読む! <55話 「それは、僕に今すぐに報告すべきことなのか?」 「おっと。夫婦の団欒を邪魔したのは悪かったよ。でも、聞いてくれよ。その集会に出てたどこぞの貴族が、首斬り鬼に殺されたっていう話なんだ」  おそらくそれは、アンベ...
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断頭台の友よ(55)

<<はじめから読む! <54話 「何に乾杯する?」  問われ、クレマンは首を傾げた。しかし、考えるまでもない。 「事件の解決を願って」 「……そう。それしかないよな」  苦笑したオズヴァルトは、グラスを掲げた。  イヴォンヌが殺されてから、...
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断頭台の友よ(54)

<<はじめから読む! <53話  ギヨタンとの邂逅と、国王陛下との謁見に正気を失いかけたクレマンだったが、遊んでいる場合ではない。マノンが最後に教えてくれた手がかりを、無駄にするわけにはいかない。  明日の旬日には、絶対に例の集会に行く。そ...
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断頭台の友よ(53)

<<はじめから読む! <52話 「心配するでない。余がなんとかしよう」  分厚い絨毯は、足音をすべて吸い取ってしまうらしい。二人とも第三者の入室に気づかず、朗々とした声で呼びかけられて、驚いて飛び上がった。そして顔を確認すると、あまりの不敬...
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断頭台の友よ(52)

<<はじめから読む! <51話 「そこで私は、新たな処刑具を提案させていただきたいのです」  何の合図を送ったわけでもないのに、王宮勤めの侍従が紙の束を持ってきたことに驚く。どこかから見られているのだろうか。思わずキョロキョロとあちこちに目...
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断頭台の友よ(51)

<<はじめから読む! <50話  ギヨタンは理想を語った。観客はクレマンひとりだけの、演説会場である。身振り手振りを交えて、共感を得ようと熱意を込めて説く。  彼は現行の死刑制度に不満を覚えていた。 「死刑をなくせ、というのではありません。...
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断頭台の友よ(50)

<<はじめから読む! <49話  誰ともすれ違わないように連れてこられた部屋に、遅れてやってきたのは、薄毛の男であった。残された髪の毛もほとんどが白いもので、相当年配であることは見てとれた。身なりは粗末とまではいわないが、あまりかまわない性...
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断頭台の友よ(49)

<<はじめから読む! <48話  その日、クレマンは朝から胃が痛かった。  原因は、数日前に届いた手紙である。マノンの処刑から三日後、まだ調子が戻らない。オズヴァルトからマノンや彼女の夫・オーギュストについての話をしたいという催促が何度も来...
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