ライト文芸 歌ってマスール(13) <<はじめから読む!<(12) 道中の食事や買い物は、すべて誠が奢ってくれた。 せめて喫茶店での飲食代くらいは自分の小遣いから出すと申し出たのだが、彼は望美が、将来のためにアルバイトに励んでいることを知っている。「ここは俺に甘えなさい」 強... 2024.09.25 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(12) <<はじめから読む!<(11) 誠はわざわざ有休を取り、車で来てくれていた。 地元より気温が高いとはいえ、東京の風は強く、十一月のオープンカーは寒い。 誠はきちんと心得ていて、車の中にはふかふかのブランケットを積み込み、望美のためにホットの... 2024.09.24 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(11) <<はじめから読む!<(10) 出発当日、なぜか空港に鏡花がいた。 尋ねる相手がおらず、愛理に聞いてみれば、「スール和泉も、たまたま研修で東京に行くんだって」 とのこと。修学旅行の一団は、そのまま飛行機を乗り継いで広島へと向かうから、羽田で... 2024.09.22 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(10) <<はじめから読む!<(9) いよいよ修学旅行二日前。望美は実家から持ってきたスーツケースに荷造りをしていた。 公立高校だと、旅行中は私服のため、荷物も多くなりがちだが、望美たちの学校は、外にいるときも学園生らしく節度を持った行動を取るよう... 2024.09.21 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(9) <<はじめから読む!<(8)『もうすぐ修学旅行だっけ?』 そんな言葉が誠から送られてきたのは、出発の十日前のことだった。 他愛のないやりとりは、普段は望美の健康を気遣う言葉が多く、学校行事に言及することはなかった。 興味もないだろうし、自分... 2024.09.18 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(8) <<はじめから読む!<(7) 文化祭も終わり、残すところ大きな行事は、修学旅行だった。 月一の実家詣での際に、望美は祖母に、「来月は修学旅行で東京へ行きます」と告げた。あまり顔を見ずに済むように、食事の下ごしらえをしながらである。 祖母はフ... 2024.09.17 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(7) <<はじめから読む!<(6) 文化祭も二日目。 同じクラスの有志によるダンスステージは盛況のうちに幕を下ろし、たこ焼きの売れ行きも好調だった。「クラスTシャツに校則通りの丈のスカートだと、なんか合わないよね」 朝イチで愛理が、そんなことを言... 2024.09.15 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(6) <<はじめから読む!<(5) 鏡花に対して講釈をたれるという、後ろ向きで陰湿な読書ははかどらない。「全然進んでないじゃん」 机に向かって船をこいでいたら、菜々が文庫を覗き込んで爆笑した。 びくん、と肩が跳ねる。完全に眠気が去った。ムッとした... 2024.09.14 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(5) <<はじめから読む!<(4)「ねぇ、ちょっとは手伝ってくれてもよくない!?」 大声に、望美は内心で、「またか」と呆れた。かといって、立場上、放っておくわけにはいかない。本格的な喧嘩に発展する前に、騒ぎの中心人物に近づいた。「どうしたの」「ち... 2024.09.11 ライト文芸歌ってマスール長編小説
ライト文芸 歌ってマスール(4) <<はじめから読む!<(3)「ありがとうございましたー」 十八時が近づいてくると、そわそわする。 退勤時間直前に、おかしな客に当たりませんように。 願いながら、ホットスナックの補充をする。 この時間帯は、部活終わりの学生や塾通いの小学生など... 2024.09.08 ライト文芸歌ってマスール長編小説