ライト文芸

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断頭台の友よ(14)

<<はじめから読む! <13話 「血は見慣れているだろうけれど」  オズヴァルトはそう前置きした。クレマンは頷きかけて、慌てて首を横に振る。捜査官と言っても、クレマンには医者という仕事もあれば、誰にも明かしてはいないが、処刑人としての仕事も...
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断頭台の友よ(13)

<<はじめから読む! <12話  バロー商会は、糸や布を扱う卸業だ。だからこそ、マイユ家との取引があり、三男坊の婿入り先に選ばれた。その邸宅は王都の三番通りと呼ばれる、裕福な商家が立ち並ぶ場所にあった。何度か訪れたことのあるマイユ邸と比べれ...
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断頭台の友よ(12)

<<はじめから読む! <11話  食事もそこそこに放り出し、クレマンはブリジットに出かける旨を伝えた。それから、自分のものとブリジットのものと、喪服の準備をしておくように言った。  彼女はいったい誰が、という顔をしたが、憔悴しきっているわり...
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断頭台の友よ(11)

<<はじめから読む! <10話 「口に合わないかい?」 「いいや……この間参加した舞踏会の食事よりも、よほど美味いのは、知っているよ」  オズヴァルトは、女性のドレスや宝飾品の製作・販売を行う大店、マイユ商会の三男坊だ。上の二人とは母親が違...
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断頭台の友よ(10)

<<はじめから読む! <9話  食堂に行くと、オズヴァルトがテーブルについていた。目の前のスープには、手がつけられた様子はない。 「おはよう、オズ」 「クレマン!」  彼は悲壮な顔をクレマンに向けると、わずかにホッと肩から力を抜いた。すぐさ...
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断頭台の友よ(9)

<<はじめから読む! <8話  その日の朝、クレマンは雷で目を覚ましたのかと思った。  秋の雷は、稲光と轟音とともに落ち、乾燥した空気を切り裂いて火事を起こす。塔に落雷したのであれば大変だと目を覚ましたが、暗雲が立ち込めているわけでもなく、...
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断頭台の友よ(8)

<<はじめから読む! <7話  もっとも、クレマンには人々の興奮など、関係なかった。怯え、逃げ惑うだけ。仮面の子供が生きるか死ぬか、見物人たちは賭けている。暴れる男に殴りつけられれば、か細いクレマンはひとたまりもない。処刑台から転落死する処...
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断頭台の友よ(7)

<<はじめから読む! <6話  父に連れていかれたのは、横領の罪に問われた騎士の処刑であった。宝物庫の警備担当であったのをいいことに、組まされた同僚の目をかいくぐり、窃盗を働いた。横領罪を償うには、両手を切り落としたうえ、横領額の三倍を賠償...
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断頭台の友よ(6)

<<はじめから読む! <5話  クレマンが九つの年、ずっと年齢の離れた兄が死んだ。  ムッシュウ・ド・パラーゾと呼ばれ、王都の治安維持に努めるべきは兄であった。そうはいっても、クレマンが自由に生きることは許されていなかった。処刑人の家に生ま...
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断頭台の友よ(5)

<<はじめから読む! <4話  クレマンは男が絶命したことを、呼吸と心臓の音で確かめると、嫌なことはさっさと済ませるに限るとばかりに、用意していた火種をしっかりと油の染みた布を巻いた松明に移し、男の身体を焼いた。火が全身に回るまでしばし時間...
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