ライト文芸

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ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【30】

<<<はじめから読む! <<3話のはじめから <【29】  引き返してきた僕のことを、糸子はちらりと見上げた。いつもと違う。そう思ったのは、彼女がずっとこちらを見据えているからだ。普段はすぐに目を逸らすのに。  微笑みを絶やさない彼女は、人...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【29】

<<<はじめから読む! <<3話のはじめから <【28】  大輔と渚は、ずいぶん先に行ってしまっていた。慌てて追いかけていく。  方角を誤らないのは、大輔の「なーぎさー」という、なんとも情けない悲鳴のおかげだった。彼の馬鹿でかい声に感謝した...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【28】

<<<はじめから読む! <<3話のはじめから <【27】  いつだってこの入り口に立つときは緊張するのだが、今日はひとしおだった。なにせ、ひとりじゃない。  僕の隣でワクワクを隠せていない大輔を見上げて、こっそりと息をつく。  コロッケ一個...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【27】

<<<はじめから読む! <<3話のはじめから <【26】  荷物を発送して、さらに気温が上がった昼下がりの道を歩く。  足取りが重いのは、暑さのせいだけじゃない。  家に帰りたくない。母親と再び顔を合わせるのが怖い。またいつもの、陰気な顔を...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【26】

<<<はじめから読む! <【25】  土曜日の昼下がり、僕は自室でぼんやりと過ごしていた。宿題なんてすぐに終わってしまって、ベッドに寝転んでいた。  暇な時間は久しぶりだった。何をして過ごしていたのかと考えれば、胸が痛む。美空と会うために病...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【25】

<<はじめから読む! <【24】 第三話 黒い糸  七月も半ばになり、あと十日ほどで終業式。梅雨がようやく明け、まぶしい太陽にさらされる季節だが、僕の心には、まだどんよりと重い雲がのしかかったままだ。  帰りのホームルームが終わり、掃除当番...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【24】

<<<はじめから読む! <<2話のはじめから <【23】  美空の真意はいったいなんだったのか。答えはすぐにわかった。  一命をとりとめたものの、美希は目を覚まさなかった。事故のときに頭を強く打ったそうだ。  脳死、という判定が下された。学...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【23】

<<<はじめから読む! <<2話のはじめから <【22】  購入した赤い糸を少し拝借して、糸子から受け取った五円玉の穴に通した。なんとなく、御利益がありそうだと思ったからだ。  それを美空に手渡すと、嬉しそうに微笑んで、「ありがとう」と言っ...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【22】

<<<はじめから読む! <<2話のはじめから <【21】  梅雨明けはまだ遠く、今日もどんよりと曇っている。だが、僕の心はすっきりと晴れて青空だ。  こんな気持ちで糸屋に行くのは初めてだった。だいたいいつも、カリカリと警戒していることが多い...
ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【21】

<<<はじめから読む! <<2話のはじめから <【20】  その日は、美空の体調が悪くて会えなかった。母親が来ていて、「ごめんね」と言ったが、謝ってもらうような話でもない。お大事に、で帰って、それから三日後、再び僕は彼女のもとを訪れた。  ...
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