ライト文芸

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星読人とあらがう姫君(5)

<<はじめから読む! <4話  そこから先はまさしく怒涛の二月だった。たくさんの嫁入り道具を、限られた人数の使用人たちは用意しなければならなかった。特に女房たちは、自分の家の姫が先方で馬鹿にされてはならない、と新しい衣を縫い上げていた。 「...
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星読人とあらがう姫君(4)

<<はじめから読む! <3話  十七の、しかも美人とはいえない露子を妻にと望んだ物好きは、なんと今上帝きんじょうていの兄君だという。幼い頃に父である先帝から源みなもと姓を下賜され、臣籍へと降下したのだ。 「三十歳? おじさんじゃない! 後妻...
ライト文芸

星読人とあらがう姫君(3)

<<はじめから読む! <2話  しかし結局、露子が入内することはなかった。そして三年経った今もまだ、独り身だ。雨子はさめざめと泣きながら、 「わ、わたくしがぁ、あんなときに声をかけなければぁ、今頃姫様はぁ……!」  と後悔の弁を述べる。  ...
ライト文芸

星読人とあらがう姫君(2)

<<はじめから読む! <1話  帝への入内の話が出たのは三年前、まだぎりぎり露子が適齢期だったときだ。大貴族の邸宅が並ぶ一角から外れた露子の家に、帝からの使者がやってきた。  応対した父が、露子の名前を呼びながら、渡殿わたどのをどたばたと走...
ライト文芸

星読人とあらがう姫君(1)

<はじめから読む!  ぱっちりと目を覚ました露子つゆこは、あまりの寒さに身震いして上掛けを引っ張った。春はあけぼの。とはいえ、弥生の朝は本日雨模様で、空気は湿っている。  しとしとという音を聞きながら、溜息をつく。雨なんて嫌いだ。 「う~…...
ライト文芸

星読人とあらがう姫君(序)

誰かが打ち捨てていった毬を、少女の小さな手が拾った。ひとつ、ふたつと地面についた。楽しくもなんともないのに、いつまでもついていた。  耳に聞こえてくるのは、蝉しぐれ。そして夏の悲しい断末魔に重なるのは、坊主たちの大音声だいおんじょう。  少...
みんな愛してるから

文也(終)

<<はじめから読む! <「明美」2話  理が何かを画策していることは、実は早いうちから気がついていた。高校から帰宅すると、珍しく父と内緒話をしていたから、おや、と思ったのがきっかけだった。  母は弟を、父は文也を可愛がるという分担が出来上が...
みんな愛してるから

明美(2)

<<はじめから読む! <1話 「あなたは、弟さんが……理くんがしていたことを、全部知っていたんですか?」  夏の午後、夏織は死んだ。腹に子を宿した状態で、元恋人の長谷川彰に刺し殺された。きっかけを作ってしまったのは、明美でもある。懺悔しても...
みんな愛してるから

明美(1)

<<はじめから読む! <「理」11話  初老の女性が、棺に縋りついて号泣している。その様子から、死者のことを心から愛していたのだということが伝わってきた。  追従するように響くすすり泣きは、死者を悼むというよりは、場の雰囲気に流されたものの...
みんな愛してるから

理(11)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <10話  理の目論見どおりに、彰が夏織を始末してくれた。アカウントはもう、一週間以上前に削除してある。そして、サトルとして過ごすのも、あとわずか。  インターネットで毒にもなる薬品を購入した。金...
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