ライト文芸 星読人とあらがう姫君(5) <<はじめから読む! <4話 そこから先はまさしく怒涛の二月だった。たくさんの嫁入り道具を、限られた人数の使用人たちは用意しなければならなかった。特に女房たちは、自分の家の姫が先方で馬鹿にされてはならない、と新しい衣を縫い上げていた。 「... 2020.08.09 ライト文芸星読人とあらがう姫君長編小説
ライト文芸 星読人とあらがう姫君(4) <<はじめから読む! <3話 十七の、しかも美人とはいえない露子を妻にと望んだ物好きは、なんと今上帝きんじょうていの兄君だという。幼い頃に父である先帝から源みなもと姓を下賜され、臣籍へと降下したのだ。 「三十歳? おじさんじゃない! 後妻... 2020.08.09 ライト文芸星読人とあらがう姫君
ライト文芸 星読人とあらがう姫君(3) <<はじめから読む! <2話 しかし結局、露子が入内することはなかった。そして三年経った今もまだ、独り身だ。雨子はさめざめと泣きながら、 「わ、わたくしがぁ、あんなときに声をかけなければぁ、今頃姫様はぁ……!」 と後悔の弁を述べる。 ... 2020.08.09 ライト文芸星読人とあらがう姫君
ライト文芸 星読人とあらがう姫君(2) <<はじめから読む! <1話 帝への入内の話が出たのは三年前、まだぎりぎり露子が適齢期だったときだ。大貴族の邸宅が並ぶ一角から外れた露子の家に、帝からの使者がやってきた。 応対した父が、露子の名前を呼びながら、渡殿わたどのをどたばたと走... 2020.08.08 ライト文芸星読人とあらがう姫君長編小説
ライト文芸 星読人とあらがう姫君(1) <はじめから読む! ぱっちりと目を覚ました露子つゆこは、あまりの寒さに身震いして上掛けを引っ張った。春はあけぼの。とはいえ、弥生の朝は本日雨模様で、空気は湿っている。 しとしとという音を聞きながら、溜息をつく。雨なんて嫌いだ。 「う~…... 2020.08.08 ライト文芸星読人とあらがう姫君長編小説
ライト文芸 星読人とあらがう姫君(序) 誰かが打ち捨てていった毬を、少女の小さな手が拾った。ひとつ、ふたつと地面についた。楽しくもなんともないのに、いつまでもついていた。 耳に聞こえてくるのは、蝉しぐれ。そして夏の悲しい断末魔に重なるのは、坊主たちの大音声だいおんじょう。 少... 2020.08.08 ライト文芸星読人とあらがう姫君長編小説
みんな愛してるから 文也(終) <<はじめから読む! <「明美」2話 理が何かを画策していることは、実は早いうちから気がついていた。高校から帰宅すると、珍しく父と内緒話をしていたから、おや、と思ったのがきっかけだった。 母は弟を、父は文也を可愛がるという分担が出来上が... 2020.06.15 みんな愛してるからライト文芸長編小説
みんな愛してるから 明美(2) <<はじめから読む! <1話 「あなたは、弟さんが……理くんがしていたことを、全部知っていたんですか?」 夏の午後、夏織は死んだ。腹に子を宿した状態で、元恋人の長谷川彰に刺し殺された。きっかけを作ってしまったのは、明美でもある。懺悔しても... 2020.06.15 みんな愛してるからライト文芸長編小説
みんな愛してるから 明美(1) <<はじめから読む! <「理」11話 初老の女性が、棺に縋りついて号泣している。その様子から、死者のことを心から愛していたのだということが伝わってきた。 追従するように響くすすり泣きは、死者を悼むというよりは、場の雰囲気に流されたものの... 2020.06.15 みんな愛してるからライト文芸長編小説
みんな愛してるから 理(11) <<はじめから読む! <この章のはじめから <10話 理の目論見どおりに、彰が夏織を始末してくれた。アカウントはもう、一週間以上前に削除してある。そして、サトルとして過ごすのも、あとわずか。 インターネットで毒にもなる薬品を購入した。金... 2020.06.14 みんな愛してるからライト文芸長編小説