長編小説

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みんな愛してるから

夏織(7)

<<はじめから読む! <6話  それからの一ヶ月あまりは辛いものだった。  身に覚えがないのに、役所のメールアドレスには、夏織のことだとわかるようにクレームが入る。電話も同様だ。  その度に夏織は叱責され、どんどん信用をなくしていく。絶対に...
みんな愛してるから

夏織(6)

<<はじめから読む! <5話  逃がすな、と明美は強く主張したが、そもそも文也のような人間が、他の女にふらっと来たようなことがあるとしたら、それはもう、本気なのではないか。  本当に私でいいの?  他に誰か、好きな人でもいるんじゃないの? ...
みんな愛してるから

夏織(5)

<<はじめから読む! <4話  こっちこっち、と手招きされて、夏織は小走りに駆け寄り、「ごめん! 遅れて!」と手を合わせた。 「ほんとよ。自分で遊ぼうって呼び出しておいて遅れるなんて。相変わらずね、夏織」  明美あけみはそう言って、紅茶のカ...
みんな愛してるから

夏織(4)

<<はじめから読む! <3話  翌朝、出勤してきた百合子を待ち構えて、文也は人目につかない場所へと呼び出した。  はらはらした思いで見守っているのは夏織だけではなかった。昨日の食堂での一件は、思った以上に目立っていたようで、文也と百合子の向...
みんな愛してるから

夏織(3)

<<はじめから読む! <2話  職場から離れた店を、夏織は指定した。同時に庁舎を出ては意味がないので、文也には悪いが時間を潰してもらって、夏織は先に出た。  バスに乗って、十分少々。待ち合わせの喫茶店に、先に入店する。  昼はいいが、夜はや...
みんな愛してるから

夏織(2)

<1話  四月の頭まで、転入ラッシュによる市民課の繁忙期は続いた。文也は福祉課所属で、五階で業務に励んでいるので、平日はスマートフォンでのメッセージのやり取りだけが、二人の恋人同士の触れあいであった。  本当は、昼休みに食堂で話すことができ...
みんな愛してるから

夏織(1)

「結婚を前提に、お付き合いしてください」  深々と頭を下げた男のつむじを、夏織かおりはぼんやりと眺めた。あ、二つある。なんて、どうしようもないことに気がつくのは、余裕があるからというよりは、現実味が薄いからだった。  夕暮れのビーチや、おし...
BL

エピローグ それでもやっぱりやめられない

<<はじめから読む! <12-4話  神崎! と後ろから声をかけられて、靖男は振り返った。そこにはやや疲れたような佇まいだったが、満面の笑みで手を振る千尋がいて、靖男も片手を挙げる。 「実験終わったのか?」 「なんとかね。ほんと、今回ばかり...
BL

12 もう一度、最初から(4)

<<はじめから読む! <12-3話  はあぁ、と満足げに溜息をついてそのまま目を閉じていた靖男の意識を引き戻したのは、きゅるるるる、という間抜けな音だった。身体を起こすと、千尋はそっぽを向いている。その耳が真っ赤になっていて、千尋の腹の虫だ...
BL

保護中: 12 もう一度、最初から(3)

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