瞼が自然に降りていく。疲労は蓄積しているが、眠気はほとんどないにも関わらず。
ヒカルが何度、目を開けようと試みても、びくとも動かなかった。体験したことはないが、きっと、催眠術にかけられたときは、こんな感じなのだろうと思った。
意識ははっきりしているので、残像がチカチカと点滅して見える。真っ暗闇だったのが、次第に白い世界へと変わっていくのをじっと見つめながら、ヒカルは諦めて、抵抗することを辞めた。
すると、面白いもので、徐々に眠気の波が押し寄せてくる。
(ダメだ。寝たら、俺はまた……)
また?
また、なんだろう。
眠りの世界へと力強く引っ張られ、思考はまともに働かない。
ヒカルの意識が沈み切る瞬間、大きな掌が頭に触れるのを感じた。
それは、まるで。
(まるで、父親……なんて)
一度として顔を見たことがない存在を、どうして今、思い起こすのだろう。
「おやすみ。今度こそ、いい夢を」
低い声が、耳に優しく響いた。
>1話
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