断頭台の友よ(34)

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十字架 ライト文芸

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33話

 早速、明日カルノー邸に向かう約束をしているオズヴァルトに便乗することになる。引き出しから勝手に便箋を取り出して、連れがいる旨をしたためる。その横顔を眺めて、クレマンは自分に負けず劣らず、彼の顔色もよくないことに気がついた。

「オズ。カルノー夫人もだが、君もちゃんと寝ているのか? また薬を処方した方がいいかい?」

 クレマンの指摘に、オズヴァルトは「ああ」と、すぐに頷いた。

「君の作った薬は、うちの近所の医者の薬よりも、ぐっすり眠れてすっきり目が覚めるんだ!」

「そうだろうとも。君に合わせて調合しているんだから」

 そうなのかい? 

 オズヴァルトはきれいな青い目を丸くした。まるで、澄んだ湖が朝日を反射して輝くように、きらきらと眩しい。

「そういえば、言ったことはなかったか。最初に君に相談されたときに、いろいろと質問しただろう? あれをもとに、君にぴったりの薬を作っているのさ。例えば、寝汗に悩まされていると言っていたから、とある柑橘の皮を擦り下ろして加えていたり」

「へぇ……知らなかったよ!」

 どうりで微かに、酸っぱいような苦いような不思議な匂いがすると思った。

 大げさに驚いてみせたオズヴァルトに、クレマンは苦笑する。

「それじゃあ、調合してくる。夕飯は食べていく?」

「もちろん! ブリジットの料理は美味しいからね」

「マイユ家のお抱えシェフには勝てないさ」

 楽しそうにペンを走らせるオズヴァルトに、クレマンは目を細めた。彼の笑顔を、元気を守らなければならない。イヴォンヌの秘密は、やはり彼に教えるのはやめておくべきだ。こんなふうに、胸に重く苦いものを抱えるのは、自分だけでいいだろう。

 クレマンはそっと、診療室へと向かった。

 

35話

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