断頭台の友よ(79)

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78話

 その後、オズヴァルトも遅ればせながらも到着した。

 女装姿を同僚にじろじろと見られたり、院長の凶行を知らなかった職員は困惑し、知っていたとおぼしき人間は逃げようとして混乱が生じながらも、一応の決着を見た。

 クレマンは執行人として黒衣を纏い、男への尋問……拷問に参加した。水責めや足責めを実際に行うのは他の刑務官たちだったが、不気味な仮面の男が同席しているというだけで、重圧を感じるらしい。減刑をちらつかせながらの拷問は奏功して、ぺらぺらと商売相手のことを白状し、娼館は摘発された。胸糞の悪いことに、クリスティンやアリスのような十代前半の少女だけではなく、まだ物心がついていない子供までいた。

 そこから芋づる式に捕まっていって、顧客の貴族の名前も多数上がった。無論、上層部がもみ消そうとしたが、クレマンはマノン・カルノーの一件で、新聞の、そして民衆の力を思い知っていた。オズヴァルトの伝手も辿り、最も影響力が高い新聞に情報提供をした。

 子供を売らなければ、生活が成り立たない家庭もある。労働力に換算され、十分に教育を施すことができない家庭も。

 しかし、十やそこらの子供であれば、身売りの先はどこか大きな店の丁稚奉公に出すくらいだ。娼館で男相手に身体を売るなんて、考えてもいないだろう。

 当然、民衆は反発した。そんな変態たちが国を動かしているなんて、許されない。暴動一歩手前までいったところで、ようやく国も動き、娼館の顧客だった貴族たちも捕まった。

 とはいえ、貴族はやはり守られている。ほとんどが罰金刑、重いものでも爵位の降格がせいぜいであったが、それでも民の溜飲は下がる。

 院長は、「これだけの名前を挙げたのだから、極刑だけは」と嘆願していたが、罪状は売春斡旋だけではなく、運営費の横領、孤児や職員に対する暴力にも及んでいた。何よりも、拷問や彼の私室の捜索の結果、アリス殺しの証拠が出てきた。

 彼女の血が拭いきれていなかった。少女が着ていたと思しき服も残されていた。何よりも、アリスの生首があった。

 クレマンは捜査官として、医師としてアリスの生首の所見を改めてしたためた。男が彼女の首を切り落とした理由は、首斬鬼の犯行に見せかけるためだけではなかった。発見された彼女の首には、はっきりと、男の手によって絞められた痕跡が残っていた。アリスは滅多にいない美少女だったため、そのまま剥製にでも出そうとしていたのだという。もっとも、そうする前に腐ってしまいそうだったが。

 殺害動機は衝動的で、いたって普遍的なものであった。これまでおとなしくしていた少女が、その日に限って抵抗をした。腕に噛みつき、頬を引っ掻き。あまりのことに激高して、思わず首を絞め、力加減を誤った。首斬鬼との関係は何もなかった。アリスは「死にたい」などと思っていなかった。

80話

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