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<13話
いつだって学食は、浮かれた連中が浮かれた話をしている。そんな中で恭弥は、浮かない顔でトークアプリを開きじっと見つめていた。光希とは他愛のないやりとりが続いていたのだが、あの日以来一切の連絡がなかった。
はぁ、と溜息をつくと、トレイを二つ持ってきた譲がやってきて、「どうした?」と声をかける。
「またあの、例の変態か?」
「ん? あぁ……」
そっちの問題もあった。別のアプリを開いた。通知設定を切ったから、スマートフォンがその都度震えることはないが、その分アプリを開く度に大量のリプライを目にすることになる。
『好きだよみゆきたん。かわいいね』
なんてのは序の口だ。最近は恭弥を監視しているかのような呟きが混じり、徐々にエスカレートしてきている。
「ブロックしたら?」
「何度ブロックしても、すぐ新しいアカウント取得するんだよね……」
食欲も失せそうな呼びかけの数々の中、ある一言を目にして恭弥は「なにこれ!」と声をあげる。
その呟きには、写真が添付されていた。スマートフォンで離れたところから撮影しているせいか画質はよくないが、恭弥の住んでいる学生マンションであることは明らかだった。そしてそこに映っているのは、黒い学生服。恭弥の知り合いで学ランを着ている人間なんて、一人しかいない。
『こんなガキを家に入れるなんて、信じられないよ。まぁ、最近は来てないみたいだけどね。やっぱり大人の男の方がいいよね、みゆきたん』
ご丁寧に最後にはハートマークまでつけられていて、余計に恭弥の逆鱗に触れる。
「あったまきた……!」
自分だけならまだしも、まだ中学生の恭弥を隠し撮りしてSNSに掲載するなんて、いくらなんでも許されない。恭弥は感情の赴くままに、ネットストーカーへとリプライした。
『変態。ふざけるな。すぐに写真を消せ。僕に何か言いたいことがあるんなら、直接顔を見せろ、卑怯者』
何も考えずに送信した。罵ったことで、今まで溜まっていた鬱憤も少しだけ解消された。譲だけは「大丈夫かよ、そんなことして」と心配したが、大丈夫さ、と恭弥は笑う。
「だってこいつはネットストーカーなんだよ? 直接僕をどうこうしようっていう度胸がないからこんなことしてるんだ」
「……ほんとにそうならいいけどさ」
気をつけろよ、と忠告する譲に対して「わかってるよ」と頷きながら、食欲が戻ってきた恭弥はランチに箸をつけた。
>15話
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