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<17話
呉井さんと合流したのは、四階だった。彼女は丹念に一階一階を捜索していて、時間がかかったのだろう。
柏木と一緒にいる俺を見て、呉井さんは「あら?」という表情になった。
「本屋でたまたま会って。暇そうだったから、一緒に探してもらおうと思ってさ」
「別に暇なんかじゃなかったわよ!」
吼える柏木が持つ本屋の袋に視線を向けると、彼女は押し黙った。
「同好会の人間以外を連れてくるのは、嫌だった?」
呉井さんは首を横に振る。
「そんなことありませんわ! 柏木さんも恵美探しを手伝ってくださるなんて嬉しいに決まっています!」
思いのほか、力強く彼女は言う。柏木の両手を握って、ぶんぶんと振る。子供っぽい仕草に面食らった柏木は、助けを求めるように俺の方を見るが、助ける気は毛頭ない。仲良くしてくれ。
「それで? 呉井さんの方も見つからなかったんだね」
「ええ。まったく。明日川くんは初心者なんだから、難易度の低い変装にしてくれてもいいのに。恵美ったら」
うん。俺が相手だからこそ、彼は本気を出しているんじゃないのかな。見つけられなかった俺を、さんざん罵倒するために。
そう考えると、ムカつくな。残り時間はあと三十分を切ったが、絶対に見つけてやろうと考えを改めた。
「怪しいところ、探しにいこうぜ」
突如張り切り、歩き出した俺に、二人は顔を見合わせた。
>19話
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