クレイジー・マッドは転生しない(86)

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クレイジー・マッドは転生しない

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85話

「あった……」

 思わずつぶやき、熟読する。

『美少女高校生、悲劇の誕生日』

 誕生日、だったのか。この日が瑠奈の十七歳の。そして読者モデルをしていた名門女子校の生徒という情報も得られた。山本に「県内の名門女子校ってどこ?」とメッセージを送ると、授業中だろうに、「黎明《れいめい》女子」とすぐさま返事が来る。俺や呉井さんのことを案じて、勉強よりも優先してくれているのがありがたい。

 記事を読んでいると、どうやら自殺の線が濃厚だったようだ。おそらく、日向という名門の家であることを考慮して、警察は明言を避け、新聞社もそれに倣った形なのだろう。ゴシップ誌にそうしたモラルがないことに、普段なら怒りを覚えるところだが、今回は救われた。

 瑠奈の同級生へのインタビューも掲載されている。ちっぽけな事件なのに、割と丁寧に取材をしているんだな、と意外だった。二人の同級生の言い分は、不思議なことに真逆だった。

『瑠奈ちゃんは可愛くて、頭がよくて……本当に、なんで死んじゃったのかなって思います。私みたいなクラスで目立たない人間にも、分け隔てなく優しくて、女神様みたいな人でした』

『日向瑠奈は、笑顔の下で何を考えているのかわからなくて、私は苦手でした。なんていうか、こっちをコントロールしようとしているように見えちゃって。なんだか、悪魔がいたら、こんな人なんだろうなって』

 女神と悪魔。同一人物がこうも両極端な評価を得ることが、あるだろうか。本当に、どんな少女だったのか。

 記事には白黒で目元に黒い線が入っているが、瑠奈の写真も掲載されていた。ティーンズ向けのファッション誌に載ったときの写真のようで、口元は微笑みを浮かべている。だが、俺には、彼女の目は笑っていないように思えた。

 他の雑誌や、同じ雑誌の別の号も一応チェックしたが、それ以上の情報は得られなかった。俺はコピーを取って、地上へと戻る。

 自殺かもしれない交通事故。相反する印象を持つ少女。俺が次にするべきことは……。

 コピーの中の、記者の名前に丸をつけた。 

87話

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