11 笑顔のメダル(2)

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11-1話

 後夜祭も終わって、千尋を着替えさせた。千紗を送るという千尋に、靖男はついていった。千紗はご満悦だった。あれこれ積極的に学生たちに話しかけて、連絡先をゲットしていた。さすが肉食女子。思わず声に出していた。

「年下相手に待ちの作戦なんて通じないでしょうよ。草食系ばっかり!」

 はは、と笑うと千尋と目が合った。千紗ちゃんはこういう人だから、仕方ないよ、とその目が言っていた。

「それよりさ、あんたたち、まとまったの?」

 千尋が狼狽えた。そういう可愛い顔をするからバレバレなんだって、と靖男は内心溜息をついて、千尋の手をぐっと引いた。本当は肩を抱き寄せたいところだが、身長差と怪我のせいでそれは叶わない。

「神崎……」

「まぁ、そういうことっすね」

 ふぅん、と千紗は笑った。そして弟の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱した。

「よかったね、千尋。幸せになんなさいね」

 実家にも顔出しなさいね、と言って千紗は手を振った。うん、と千尋は笑っていた。

「さて……と」

 帰ろうか、と言う千尋は自然と靖男の手を離そうとした。

「神崎?」

「俺、怪我人だからさ」

 だから手を繋いでいても平気だろ、と靖男は言い募った。実際傍から見たら絶対におかしいだろうが、構わなかった。

「あのさあ、五十嵐」

「うん?」

 背伸びして、そっと耳打ちをする。背伸びをしないと届かない距離なんて、女性との付き合いではさすがになかったから、新鮮だ。

「俺の怪我治ったらさ」

 ちゃんと、エッチ、しよ?

 そう言った瞬間、千尋は反射的に靖男の背中を叩いていた。

「外でそういうこと、言わない!」

「おいこら、こっちは怪我人だぞ! 治らなかったらどうするんだよ!」

「いいよ、別に!」

 千尋は微笑んで、靖男の手を握った。

「そうしたらずっと俺が、隣にいるから」

「……うん」

 すごい殺し文句だな、と靖男は自分の頬が熱くなるのを感じた。天然は恐ろしい。

12-1話

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