平行線上のアルファ~迷子のオメガは運命を掴む~(15)

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14話

 軽快な音楽のあと、すぐに爆破音がして、悲しげなメロディーに切り替わった。

「あ~! また死んだっ!」

 早見がくれたゲーム機をインターネットに繋いで、ランキング上位のゲームをいくつかダウンロードした。日高ですら知っている、デフォルメされたひげ男のキャラクターを操るアクションゲームなのだが、現状、初歩の初歩でつまずいている。

 昼食の後から、何度も挑戦を続けていた。ゲームオーバーの文字も、もう見飽きた。

 母子家庭の貧乏暮らし、男のオメガという珍妙さから、日高には子どもの頃から、家を行き来する友人がいなかった。友威と出会ったのは中学の頃で、彼もまた、ゲームにあまり興味のない人種であった。

 現代っ子ならば確実に通るだろう、テレビゲームに触れずに生きてきた。そのため、操作システムへの慣れや勘というものが、日高には欠けている。

暇つぶしにはちょうどいいが、先に進めないのは、地味にストレスがかかる。

「反射神経は悪くないはずなんだけど……」

 ぶつぶつ言いながら、コンティニューボタンを押そうとしたところで、扉がノックされる。当然、二人暮らしの家でそうする相手は早見しかおらず、日高は慌てて扉を開けた。

「なんだかすごい声が聞こえてきたが」

 執筆活動に勤しんでいた早見が、休憩のタイミングで出てきたところで、冒頭の叫び声である。死んだという穏やかではない言葉を聞きとがめ、心配してノックしたというわけであった。

「うっ。騒がしくてごめんなさい」

 恥ずかしさで、頬が熱くなる。

「迷惑ではないが……これは?」

 しばらく操作を放っておいたことで、プレイヤーキャラであるおじさんは、立ったまま鼻提灯を膨らませている。大きくなったタイミングで、パァン、と弾ける度に目を覚ます、というのを繰り返していた。

 興味津々な早見を見て、日高は両手を合わせ、両目を閉じた。わかりやすく、懇願の姿勢である。

 テレビとゲーム機を買ってくれたあの日から、日高は少しだけ、早見に甘えることに抵抗がなくなった。十個近く年下の日高の我が儘は、彼にとっては可愛いもの。

 だって、家族だもんな。

 これは、早見から割り当てられたロールプレイなのだ。

 日高は自分に言い聞かせながら、早見をゲームに誘う。

「全然クリアできなくて、困ってるんです。早見さん、原稿の〆切まだ大丈夫だったら、手伝ってください!」

 片目をそっと開けて窺うのも忘れない。こういう年下っぽい仕草に、ことのほか早見が弱いということを、日高はすでに学んでいる。

 早見は了承し、しまわれたままだった二つめのコントローラーを取り出した。

16話

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