「ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~」(寺崎昴)

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レビュー

長編を投稿し終えて、またちょっと余裕ができたので、積んでいたBLを読みました。

「ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~ 」(寺崎昴)

↑Amazonの電子書籍購入ページに飛びます。

投稿の先輩、寺崎昴さんのデビュー作です。
デビュー本当におめでとうございます!
発売直後に購入していたのですが、長編にかかりきりになって読むの遅くなりました。

まず、表紙があの笠井あゆみ先生なので、「おお……!」となりました。
その後、笠井先生の表紙イラストなのに受けが裸じゃないこと、エロくないことに再び「おお……!」となる私。
(偏見です)

主人公の祭は先天性獣化症という遺伝子異常が原因と思われる病で、狼の姿で生まれてきました。
バチバチのファンタジーじゃなく、しかも耳と尻尾だけじゃなく、二足歩行の狼という現代日本が舞台のガチの獣人攻めです。
獣人モノといえば、発情期云々つがい云々出てきそうなイメージじゃないですか?
どちらかといえば「動物」としての本能を全面に押し出す物語になりがちな獣人モノ。

しかし祭と受けの哲平のやり取りを通して何度も、獣人は姿かたちが普通と違うだけの、普通の人間であることを思い知らされます。
嫌悪の目で見られたり、好意的かと思えばマスコット扱いだったり。
出てきた食事に毛が入っていれば真っ先に疑われ、そのおかげでバイトをクビになったり、書類だけで就活もうまくいかない。
大学入学後から親しくしている同期の内定が決まっても、素直に喜べない。
そのときの話を哲平にしたときに、「ただの人間」という言葉が出てきて、ハッとしました。

とにかくキャラクター同士の掛け合いが魅力的でした。
主役二人の会話はもちろん、何よりも祭の弟の楽がいいキャラです。
バリバリの反抗期で、母親のことを「ババア」って言っちゃうけれど本当はいい奴。
ネコアレルギーなのに捨て猫拾ってきて顔パンパンにするくらい。
(祭の幼少期の捨て猫エピソードとの対比もよかった)
こんな弟欲し……くはないな、うん。
ババアって言われたらショックで寝込んでしまう(笑)。

祭の母は強くて格好いい母ちゃんだな、と最初思っていました。
祭のために夫の父親をグーパンするところとか。
けれど終盤、祭が哲平を好きになったことを知ったときの反応に、彼女もまた、普通の母親であったのだと気づきました。
子供の幸せ、苦労する道を歩ませたくないという気持ちが暴走して、子供の自由を奪ってしまう。
そんな母親。
この一家がまるで、本当にこの世界に存在する普通の家庭のように感じられました。



祭は外見、哲平は同性愛者であるという内面が、「普通」とは違っています。
他者と違うことは容易にコンプレックスと結びつき、うまく付き合っていくことが求められます。
しかしそれは、「私は〇〇だから」と言って、すべて諦めてしまうことと同義ではありません。
タイトルの「ギフテッド」が、他者と違う自分自身の個性へと捉え方のヒントになるのではないでしょうか。

読了後は何とも言えないあたたかい気持ちに包まれ、思わず「多幸~」と呟いてしまったほどです。
獣人モノ苦手……という方の中で、姿かたちじゃなくて先述したような要素が苦手な方には、読んでみてもらいたいです。

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