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『騎士と王太子の寵愛オメガ~青い薔薇と運命の子~』(滝沢晴)
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滝沢先生の著作といえば、
の印象が強すぎて、コメディが得意な作家さんという認識だったのですが、シリアスもめちゃくちゃよかった……!
五歳の息子・ミールとともに貧しい農村で暮らすオメガの青年・キラは記憶喪失。
死に別れたつがいのアルファの借金返済のため、村人たちにこき使われる日々を送っていた彼の元に、ある日、立派な身なりの男がやってくる。彼の名はジャムシード。
隣国の騎士だと名乗る男は、キラのことを王太子の寵妃だと言い・・・・・・。
タイトルが騎士『と』王太子の、なので「えっ、3P・・・?」と一瞬身構えますが(そうか?)、安心してください。
安定のつがいモノですよ!
村で陰口を言われ、息子も仲間はずれにされているキラの冒頭の生活が辛すぎて、まず泣きそう。
薄幸受けだわ~・・・・・・と思いきや、道中で意外と感情的で強いことが判明。
そうだよね。あんな生活じゃあ、感情も死ぬよね。
っていうか、殺すよね。息子を守るためにも。
強気受けとまでは言いませんが、芯が強い受けで大好物です。
そんな彼の感情を引き出し、息子にも親切にしてくれる攻めのジャムシード。
こちらも寡黙そうに見えて実は饒舌、むしろノリがいい。
一番ノリノリだったのが、護衛のウマルとともにミールのごっこ遊びに付き合っているときですね。
裏声で「ミール様、助けて~!」って言ってるところをぜひともドラマCDで聞きたい。
脇を固めるキャラも個性的で、彼らの旅はまさしく珍道中。
侍女(に見せかけて実は・・・)のヤスミーンの本性が好きです。
彼女の影響を受けたキラのセリフも笑いました。
とまぁ、合間にはほのぼのした疑似親子のやりとりをしつつ、隣国への旅を続けていきます。
途中でジャムシードがアルファと知ったキラは、彼に惹かれている自分に気がつきます。
私は実はこの、「アルファとオメガだから/惹かれあうのが本能だから」というのに懐疑的というか、それ以外の理由が欲しいんだよ! というタイプで。
(だからベータ絡みのオメガバースが好きです。攻めでも受けでも)
キラが自分の気持ちにセーブをかけているところが、ぐっときましたね。そしてキラからの告白シーンも情熱的でステキでした。
「自分をさらって逃げてほしい」っていう受けからの口説き文句、この世界観だからこそですね。
後宮を巡る陰謀モノでもあります。
どうしてキラは、失踪することになったのか。
ジャムシードが青い薔薇を宮殿に届けさせる理由は?
その辺りも注目して読んでもらいたいですね。
ジャムシードの正体や自分のことがわかった後も、キラはずっと記憶喪失のまま。
過去の自分にすら嫉妬してしまう始末。
薔薇の香りの中、幸せなデジャビュから記憶を取り戻したクライマックスシーンは、カタルシスが押し寄せます。
「私にとってはこれが青なんだ。~」(P66)他、伏線となるセリフはいくつもあったのに、肝心なことは何も言わない(キラの心を守るために言えない)ジャムシードに、怒っていいやら笑っていいやら。
個人的にはラピスラズリに込められた想いが切なくて、ラストシーンで「本当によかったねえ!」と感動しました。
村では満足に食べられなかっただろうキラ親子が、道中美味しそうなものを食べているシーンが結構あります。
ムガル帝国時代のパキスタンをモデルとしているそうで、聞き慣れない食べ物(ビリヤニしかわからない)(食べたことはない)がたくさん出てきますが、美味しそうです。
スパイスの匂いが漂ってきそうな感じ!
カレー食べたい!
牛肉を見たときのキラの興奮っぷりがとても微笑ましかったなあ。
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