まだまだ秋の読書週間!
「龍ノ国幻想1 神欺く皇子」(三川みり)
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これまた、「すげー話!」に出会ってしまった。
阿部智里『八咫烏シリーズ』に初めて出会ったときと同じような興奮を覚えました。
古代日本風の世界が舞台のファンタジー。
(参考文献リストを見るに、平安より前)
人名とか設定とか、最初はとっつきにくく、まず慣れるのに大変。
電車の中で読んでいて途切れ途切れになってしまって、何度「皇尊(すめらみこと)ってなんて読むんだっけか・・・・・・?」ってなったことか。
一度ハマると一気に読み進めたくなります。
皇尊の一族の女は皆、龍の声を聞く。
聞こえない女(遊子)は一定の年齢になると、龍ノ原から出されることになっているが、その実、無残に殺されていた。
遊子である日織は、男として育てられて難を逃れたが、同じく龍の声を聞かない姉の惨殺死体を見てしまう。
そのまま成長した日織が、異端とされた人々も安心して暮らせる国に変えるべく、皇位を目指す話。
皇位を争うのは三人。
叔父の山篠皇子とその息子(要するにいとこ)・不津王。
陰謀の臭いがプンプンしますし、緊迫するシーンが多いです。
また、皇尊不在なせいで、作中ずっと雨が降っているので、重苦しい。
そんな中、日織を取り巻く人々とのやりとりにホッとする瞬間があります。
秘密を知る共犯者・空露との軽妙な掛け合いは、私の好きな主従。
↑若宮&雪哉もよし。若宮&澄尾もよし。長束&路近もよし!
↑延王・尚隆と六太のコンビが嫌いな人いる??
↑こちらの主従は・・・・・・うん。
敬いつつも軽口を叩き合える雰囲気が、身分を超えたバディ感があって好きなんですよね。
日織には二人の妻がいて、二人ともタイプの違う美人。
明るく奔放で幼い月白と、美しく賢い悠花。
それぞれと相対するときの日織もいいんだけど、この奥さん二人が遊んでいるシーンも微笑ましい。
こういう癒やしのシーンがあることで後々、我々読者は地獄を見ることになるのですが・・・・・・。
皇位争いが先代(悠花の父で日織の叔父)の遺言で謎解きだし、途中で人死にも出るのでミステリです(断言)。
日織の視点でずっと進んでいくのかと思いきや、途中で謎の「彼」という人物が出てきます。
よーく読むと、すぐに誰のことなのかわかります。
そこでタイトル二度見。
そっちもか!!!!
日織だけじゃなく、悠花も月白も秘密を抱えています。
違和感を覚えた部分をチェックしていくと、日織と同じタイミング(か、一瞬早く)で気づけるかな?
でもあそこまで可哀想だとは思わなかった・・・・・・伏線は張られていたんだけどね。
山篠のことは、日織も実の息子の不津も相手をしていなくて、お互いをライバル視している状態。
不津が皇位に就いたらやりたいことを語るシーンで、この龍ノ原という国にディストピア感を覚えました。
龍ノ原には貨幣もなく、皇尊のやその一族を養うために労働し、富や利を追求しない。
軍隊もなく、鉄器を龍が嫌うことから最低限しか利用されない。
同じ大地にある他の八つの大国には、それらのものがあるというのに。
ちなみに他の国はすべて、龍ノ原で大罪を犯した人々が追放された先でつくった国、という説明。
罪人の子孫たちの国が大きく栄えていて、龍ノ原という宗教国家がいにしえからの姿を保っていること、民も支配者層もそれを疑問にすら思っていないことに、不津は憤りを感じていて、龍ノ原にまずは都をつくるという目標を語ります。
日織も不津も、「龍ノ原を変えたい」「このままではいけない」という点は共通しています。日織は国の中で比べ、不津は外の世界と比べているというのが大きな、決定的な違いでしょう。
自分の感情だけで突っ走ってきた日織が絶望の淵に立たされたとき、悠花の「救って」の一言で新たに決意し直すシーンがめちゃくちゃ胸が熱くなって好き。
謎を解いたところで、地大神に認められなければなりません。
ラストシーンに向けてまだまだドキドキが続く物語です。
そんでもってこのラスト・・・・・・えっ、どっち????
ちょっと難しい古代用語と人名に慣れさえすれば、あとは一気に読めるので、ぜひとも読んでもらいたい重厚なファンタジーです。
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