眠り屋羊は狼貴公子の閨で恋をする(村崎樹)

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レビュー

モフモフ祭り、ラストはリンクスロマンスもふ~。

「眠り屋羊は狼貴公子の閨で恋をする」(村崎樹)

獣人たちが暮らす商業都市・ファラベルバル。田舎から出てきた羊獣人のメロウは、魔法で人々を健やかな眠りに導く“眠り屋”を営んでいる。ある日、シカ族の紳士から依頼されたのは、領主である伯爵の三男坊で、いわくつきと噂の狼貴公子、オリヴェル・バリエンフェルトを眠らせること。肉食獣を内心怖がっていたのに、凛々しい美貌と誠実な人柄のオリヴェルに魅了されたメロウは、オリヴェルの寝室で眠りの魔法を施しながら次第に心を通わせるようになる。ところがある日、二人でベッドにいると、突然オリヴェルが別人のように豹変!! 彼はなんと、自分はオリヴェルの第二の人格なのだと言いはじめ――!?

あらすじ
↑樹先生のデビュー作は和風モフモフでした。
↑こちらは同じくファンタジー。空飛ぶ羊は見てみたい。

眠りの魔法でひとを安眠に誘う眠り屋、という設定が癒し系。
魔法に使う小道具として絵本が出てきますが、まさにBL絵本を読んでいるかのような気分。
特に、クライマックスで受けのヒツジちゃんであるメロウが高度な魔法を使うシーンは、カラフルな色彩が目に浮かびます。
映像化したら絶対きれいだろうなあ。

攻めのオリヴェルは二重人格(無自覚)で、きっかけは怒りによって我を忘れた自分が大切なひとを傷つけてしまったことでした。
そのため、感情が昂ぶると人格が交代してしまい、紳士→ワイルドに変貌します。
肉食獣らしい(?)粗野な言動ですが、その裏側にあるのはやっぱり、「草食獣、大切な相手を傷つけたくない」という優しさです。
最初は肉食獣が多く住む中央区に連れてこられ、人格交代する前からびびっていたメロウも、オリヴェルの人となりを理解して、すぐに好感を覚えます。

喜怒哀楽の怒、それから生存本能に根ざす気持ちで揺れると、オリヴェルは人格スイッチしてしまいます。
本能の中には、当然生殖に直結する恋愛感情も含まれており、メロウにメロメロ(作中にこんなダジャレはない)になったオリヴェルが、デート中に人格が変わったりもします。
そうと悟らせないようにする副人格がとても好きです。
二重人格モノは、統合するのかそのままなのかで大きく好みが分かれるところですが、そこはぜひ、ご自分の目で確かめてください。

ところでファンタジー、特に貴族社会を扱うものにおいて切り離せないのが、「差別問題」だと思います。
もちろん、あってはならないことだと思うし、たとえ自分の中に差別感情があったとしても、それを表に出すことはいけないことです。
が、貴族が庶民を、今回は肉食獣が草食獣を見下す傾向にあることは、物語の障害としては欠かせないものだとも思うのです。
設定上、どれだけ偉ぶっていてもおかしくない(それこそ、彼の父や兄たちのように)オオカミ族のオリヴェルが、草食獣たちの生み出す繊細で素朴な世界を愛し、彼らの価値を認めていることを知り、メロウもまた、「草食獣側の架け橋となりたい」と誓うシーンは、非常に心に残りました。
壁や障害に立ち向かうひとの姿は、いつだって美しいのです。

なんか真面目な話をしてしまったな(笑)。
もっと軽く感想を述べるとしたら、エッチシーンがすごくエッチでした。(語彙力どこいった)
無自覚に殺し文句で攻めを煽りまくる受けが可愛いです。
お気に入りのセリフは、

「恋にも気づけない純真無垢な羊の方が好きですか・・・・・・?」

『眠り屋羊は狼貴公子の閨で恋をする』(P177)

です。

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