薔薇をならべて(23)

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22話

 花屋の開店前準備や、老婦人宅での実習を経て、香貴はようやく人並みに植物を育てることができるようになった。肥料は与えれば与えるほど、植物が元気に育つ魔法の薬ではないし、土が許容できる水の量には限界があるということも学んだ。

 今はまだ、サボテンばかりだが、頃合いを見計らって、種を一緒に植えつけようと思っている。野菜もいいかもしれない。収穫して食べるという楽しみは、何よりのモチベーションだ。

 ステップアップの植物を何にするか考えていた休日、何の前触れもなく、香貴が自宅を訪れた。

 まさか、順調に生育していたはずのサボテンたちに、何かあったんじゃないだろうな。

 これまでの行いのせいで、真っ先に疑った。慌てて玄関口に顔を出した涼だが、心配は無用であった。香貴は落ち込んでいない。満面の笑みを浮かべている。

「どうした?」

 招き入れたからには、茶の一杯も出さずにはいられない。ちらりと急須も目には入ったが、洗い物が面倒なので、ティーバッグをカップに入れ、湯を注いだ。そのまま出しても、香貴は文句を言わない。ありがとうと受け取って、ふーふーと冷ましている。

「サボテンになんかあったか?」

「ううん。順調。写真見る?」

 得意げに突き出されたスマホの壁紙は、丸いサボテンの写真である。教えたとおり、明るくて風通しのいい場所に置いてあるのだろう。

「冬になって水やるの止めたら、次の春には花が咲くかもな」

「本当? 楽しみ!」

 どんな花だろう、と想像している香貴は嬉しそうだ。

「で? 今日は、どうしたんだ?」

「ん。あのさ」

 もじもじと恥じらう仕草を見せる。商店街の幼なじみたちがやれば、「きめえ」「ふざけんな」と、しばきたくなる動作だが、香貴は様になっている、というのもおかしいか。とにかく涼は気持ち悪いとも思わなかったし、なんならちょっと可愛いとさえ思った。

 彼は持っていた鞄から、箱を取り出した。淡いピンクの包装紙に白いリボンがかかっている。小さいくせにやたらと主張の激しいブランドロゴは、ファッションに疎い涼ですらよく知る、女性モノの老舗だった。

24話

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