可愛い義弟には恋をさせよ(27)

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26話

 週末、津村の知り合いの不動産屋に行って、間取り図をいろいろ見せてもらった。

 一人暮らし初体験の圭一郎は、家賃と最寄り駅以外の条件についてはピンと来なかった。そのため、津村と彼女の友人女性に質問攻めにされながら、具体的な物件を絞り込んでいく。男の気軽な一人暮らしだ。キッチンや収納にこだわりなどないし、正直ワンルームや1Kでよかったのだが、なぜか紹介されたのは、1DK以上の物件ばかりである。

「まぁ、今後のことを考えて」

 今後、という言葉の意味もよくわからなかったが、プロの言うことだし、と、圭一郎は神妙に頷いた。

 会社と実家の間のエリアの物件の内見に行ったが、女性はニコニコというよりも、ニヤニヤしながら案内した。営業というよりも、津村の友人としてのポジションでいるらしい。

 三つ目の物件の見学のときだった。津村をキッチンに立たせて、「どうですか? 背の低い女性でも使い勝手がいいようにできているんですよ」と言われ、彼女の魂胆に気づく。

「あの」

 勘違いは正すべきだ。自分は気にしなくても、津村の名誉のために。

「俺たち別に付き合ってるわけじゃないし、同棲の予定とかないんですけど」

「え?」

 彼女の反応は素であった。津村に向き直ると、「だってあんた……」と口を開きかける。彼女に対して津村は、人差し指を口に当て、「しーっ」と繰り返している。耳まで真っ赤になっている。圭一郎はその光景を目の当たりにして、ようやく津村の気持ちを悟った。

 真っ先に浮かんだのは、どうしようという困惑だった。

 職場恋愛は禁止されていない。今までは、年代がばっちり合う独身男女が揃うことがなかっただけだ。今後の二人の関係は、すべて圭一郎の意志に委ねられている。

 ひとまず今日の物件巡りは、中止することにした。本当は付き合ってくれた礼に、夕飯を奢る約束をしていたのだが、中途半端な時間である。

 不動産屋に戻ってから、駅まで並んで歩くが、空気が重い。圭一郎からアクションを起こすのも違う気がする。微妙な距離を保ったまま、速足になるのも逃げていると思われて、失礼な気がして、ヒールの高い靴を履いた津村に合わせて移動する。

 駅に着いたが、このまま別れるのも気まずい。一度立ち止まり、何か会話のきっかけになるものがないか、さっと辺りを見回す。テラス席のあるカフェを見つけて、圭一郎は「津村。ほら、茶でも飲んでから帰ろうか?」などと、ナンパ紛いに声をかけた。

28話

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