癒し

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ライト文芸

函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話⑨

<<はじめから読む!<第一話⑧ ようやく春めいた空気が感じられるようになってきた。雪はすっかり溶けて、太陽の光は柔らかい。 看板を出しに外に出ると、途端に風が強く吹く。そうなるとさすがに寒くて、捲った袖から覗く腕を摩った。「雨宮さん!」「陽...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話⑧

<<はじめから読む!<第一話⑦ 水曜日、バー「月虹」の開店前に集合した。メンバーは三人、私と陽太と、それからマスターの鉄平さんだ。 彼は「何度来たって駄目なもんは駄目だぞ」とでも言いたそうな無表情のままだった。兄の隣で、陽太はハラハラと、「...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話⑦

<<はじめから読む!<第一話⑥「うーん……」 タブレットでレシピサイトを漁ること数時間、このサイトもそれらしきレシピはヒットしなかった。 そもそもクリームシチューって、誰が作ってもそんなに変わり映えのしないものだ。特に市販のルーを使う場合は...
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函館駅前おしゃべりカフェへようこそ 第一話⑥

<<はじめから読む!<第一話⑤ 水曜日。 私は毎日がお休みだが、今日は不動産屋の陽太もお休みの日だ。「いらっしゃい」 出迎えた私を上から下までザっと見た彼の頬は、ほんの少し赤かった。今日は暖かい日だと思ったけれど、車をずいぶんと離れたところ...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話⑤

<<はじめから読む!<第一話④ 指定されたのが夜の九時だったので、驚いた。夕食時とも言いづらい。七時から始まった飲み会が一段落して、帰るにはまだ早い。さあこれから二次会でも、という時間帯だ。 えぇ、と難色を示す私を、陽太は説得にかかった。彼...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話④

<<はじめから読む!<第一話③「ここは魚が安くて美味いんだ」「そうなんだ……」 店主の手書きなのだろうメニューは味わい深い。少し曲がっているけれど、「だからどうした?」と、堂々たる筆文字。豪胆な男性がやっているのだろうな、と想像した。オーダ...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話③

<<はじめから読む!<第一話②「はぁ……」 高望みやえり好みをするな、と姉には言われた。特に無理な希望を押し通そうとしているわけではないのだけれど、就職活動は難航中だ。 長引く不況、特に飲食業界は原材料の高騰でダメージを追っていて、経費の中...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話②

<<はじめから読む!<第一話①「お父さんもお母さんも言わないから、私が言うけどさあ」 と、前置きをした姉・晴日はるひの言いたいことはわかっている。皆まで言うな。 続く言葉は予想通り、「そろそろ働け」だった。 八月のお盆休みの前に会社を辞めた...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 第一話①

<<はじめから読む!第一話 婚約破棄と思い出のクリームシチュー「待って、ってば!」 渾身の大声とともに手を伸ばしたところで、ハッと意識が浮上した。夢だ。何度も繰り返される、現実にあった悪夢。 彼と婚約破棄をしたのは夏になってすぐのことで、す...
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函館駅前おしゃべりランチへようこそ 

プロローグ 東京の夏にはもう慣れたつもりだったけれど、今年は特に暑い。エアコンの効いた屋内と比べて、外は地獄だ。 内勤だし、昼はお弁当を作ってきているから、就業時間内に外出することは滅多にない。 勤務中はずっと白衣で、特に服装規定はない。行...
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