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涙屋の未亡人

細い装飾文字で書かれた看板を前に、カールはお仕着せの鎧の泥を拭った。兜を脱いで、髪の毛を手ぐしで整える。蒸れてぺたりと寝てしまった自慢の金髪は、なかなか納得できる形にはならない。  悪戦苦闘するカールだったが、不意に店の扉が開いた瞬間、動き...
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王女様は本の虫

天使の指先がページを捲るのを、エミールはしばらく眺めていた。装飾品などひとつもつけていないのに、真珠のように真っ白に輝いている。  じっと、群青色に瞬く目を、手元の本に向ける。はらり、と額にかかったのは夜と夕の狭間の、淡い光を放つ藍の色をし...
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