二週間の恋人(11)

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10話

「は~、気持ちイイ!」

 車から降りて、俊平はうぅ、と呻き声をあげながら、背伸びをした。妙に年寄りくさいところがある、と要は苦笑しつつ、湖畔へと歩みを進める。

 晴天の土曜日、家族連れやカップルが多いが、車がないとここまで来るのは厳しく、中高生らしき姿はない。

「お、すっげ。駒ヶ岳めっちゃきれいに見えますね!」

 即座にスマートフォンを取り出して、俊平は写真を撮り始める。確かに、どこまでも澄み渡った青空を背景に、そびえたつ駒ヶ岳は雄大で、ちょこんと尖ったその特徴的な姿が映える。

 何度もシャッターを切っている俊平が、途中から自分を撮影していたのに気づいて、要は慌てて止めた。俊平は笑って、「変なことに使おうって言うんじゃないですから」と言い訳をするが、変なことって、なんだ。要は怖くて、尋ねることができない。

「で? ここまで来て、何をするんだ?」

 咳払いをしてごまかし、要は俊平に尋ねる。ここまできたら、あれしかないでしょう、と指さした場所を見て、要は何度も首を横に振った。

「いや、ちょっと待て。無理。無理無理」

「大丈夫ですって! 小学生でも頑張ればどうにかなる距離だから!」

 拒否する要を無理矢理、俊平は引きずっていく。レンタサイクルショップだった。定期的な運動を欠かさないタイプの二十代前半の俊平と違い、こちらは立ち仕事しかしていない、インドア派のアラサーなのである。土曜日の午前中といえば、普段ならば寝倒している最中だ。サイクリングするような体力など、持ち合わせていない。

 あまりに嫌がるものだから、俊平は「もしかして」と意地悪く笑った。

「せんせ、自転車乗れないの?」

「そんなことあるはずないだろ! 乗れる!」

 馬鹿にするな、と怒鳴ってから、要は俊平の策にはまったことを悟った。じゃあ何も問題はないじゃないか、と俊平は店の中に入っていって、勝手に自転車を借りてしまった。

 うぅ、と呻き声をあげた要を、俊平は励ました。

「湖の周り一周したら、大沼だんご買ってあげるから」

 子供の機嫌を取るがごとく、俊平は交換条件を出した。湖畔の店で売っている名物で、串に刺さっておらず、容器の中に小さめのだんごがぎゅうぎゅうに詰まっているのを、楊枝で刺して食べるのだ。

「ごまとあんこ、どっちがいい?」

「……ごま」

 断じてだんごにつられたわけではない。断じて。

12話

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