みんな愛してるから

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夏織(9)

<<はじめから読む! <8話  次の日すぐに、文也は夏織が妊娠したことを上司に申し入れ、退職の旨を切り出した。夏織は彼の隣で、黙っているだけでよかった。  おめでとう、という祝福の声が、ぱらぱらと上がった。以前子供ができた職員に対しては、も...
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夏織(8)

<<はじめから読む! <7話 「おめでとうございます」  給湯室で昏倒したところを発見され、病院を訪れた夏織に対して、医師は祝福した。内科やら外科やらの問診を元に、最後に回されたのは婦人科だった。  ストレスなのか、それとも何か大きな病気な...
みんな愛してるから

夏織(7)

<<はじめから読む! <6話  それからの一ヶ月あまりは辛いものだった。  身に覚えがないのに、役所のメールアドレスには、夏織のことだとわかるようにクレームが入る。電話も同様だ。  その度に夏織は叱責され、どんどん信用をなくしていく。絶対に...
みんな愛してるから

夏織(6)

<<はじめから読む! <5話  逃がすな、と明美は強く主張したが、そもそも文也のような人間が、他の女にふらっと来たようなことがあるとしたら、それはもう、本気なのではないか。  本当に私でいいの?  他に誰か、好きな人でもいるんじゃないの? ...
みんな愛してるから

夏織(5)

<<はじめから読む! <4話  こっちこっち、と手招きされて、夏織は小走りに駆け寄り、「ごめん! 遅れて!」と手を合わせた。 「ほんとよ。自分で遊ぼうって呼び出しておいて遅れるなんて。相変わらずね、夏織」  明美あけみはそう言って、紅茶のカ...
みんな愛してるから

夏織(4)

<<はじめから読む! <3話  翌朝、出勤してきた百合子を待ち構えて、文也は人目につかない場所へと呼び出した。  はらはらした思いで見守っているのは夏織だけではなかった。昨日の食堂での一件は、思った以上に目立っていたようで、文也と百合子の向...
みんな愛してるから

夏織(3)

<<はじめから読む! <2話  職場から離れた店を、夏織は指定した。同時に庁舎を出ては意味がないので、文也には悪いが時間を潰してもらって、夏織は先に出た。  バスに乗って、十分少々。待ち合わせの喫茶店に、先に入店する。  昼はいいが、夜はや...
みんな愛してるから

夏織(2)

<1話  四月の頭まで、転入ラッシュによる市民課の繁忙期は続いた。文也は福祉課所属で、五階で業務に励んでいるので、平日はスマートフォンでのメッセージのやり取りだけが、二人の恋人同士の触れあいであった。  本当は、昼休みに食堂で話すことができ...
みんな愛してるから

夏織(1)

「結婚を前提に、お付き合いしてください」  深々と頭を下げた男のつむじを、夏織かおりはぼんやりと眺めた。あ、二つある。なんて、どうしようもないことに気がつくのは、余裕があるからというよりは、現実味が薄いからだった。  夕暮れのビーチや、おし...
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