短編小説

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ホラー

雨宿り

ギギ……チリン。 あら、いらっしゃい。初めてのお客さんね。 こんな天気だから、お客さんも来ないし、もう閉めちゃおうと思っていたの。ああ、大丈夫! 追い出したりしないわ。 迷惑なんかじゃない。来てくれて嬉しいわ。あなたを待っていたの……なんて...
短編小説

ひと月遅れのアドベント

黒板の横にかけられた日めくりカレンダーも、だいぶ薄くなった。日直でもないのに、今月になってから、毎朝毎朝破り捨てた甲斐があるというもの。 明日から十二月。誰もが心躍る、あのシーズンの到来。「あ、おはよう!」「はよ……今日も無駄に元気だな、お...
短編小説

アイのはなし

ジャングルジムにのぼると、木の枝が近かった。おそらくは桜だろう。東京よりも暖かいこの地域では、三月中にすべて散って、すでに若葉がぴょこぴょこと顔を出している。柔らかそうなそれに手を伸ばそうと身を乗り出すほど、ぼくは子どもじゃない。 ああ、違...
短編小説

JCの半分は妄想でできている

中学生になって、初めての授業参観日だった。来なくていいよ。朝出かけるときに、寝ぼけ眼のおいちゃんにはそう言ったけれど、来てくれたのは嬉しかった。ママは仕事が忙しくて、なかなか来られなかったから。 たとえ襟のゆるいTシャツにジーパンなんていう...
短編小説

梅雨に彩花

大きく武骨な手から、丁寧な文字――読みやすい、とは言わない。癖はない。だが、ちまちました文字は、老眼鏡にクラスチェンジしたと噂の担任には、読みにくいに違いない――が生まれるのは、興味深い。 この年になってやることはないけれど、昔はてのひら同...
BL

保護中: Stolen Ordinary

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短編小説

海を泳ぐ月

廊下側の後ろから二番目の席は、ほぼ対角線上にある、窓際の一番前にいる彼を観察しやすくて、私のお気に入りの席だ。「森もりー。森海かいー。ここの訳」 その後三回、先生は彼の名前を呼んだ。ようやく自分があてられていることに気がついた森くんは、ぬら...
短編小説

拝啓 ゴッドファーザー様

飛行機を降りた瞬間、熱気が襲ってきた。「あ……っつーい!」 誰よもう、北海道は涼しいなんて言った奴は! と憤慨しつつ、日よけのカーディガンを脱ぐ。機内アナウンスで「現地の気温は現在二十六度、予想最高気温は三十一度……」と流れていたのは空耳か...
短編小説

魔女の爪は赤い

「なぁ。その赤い口紅、やめない?」 浩司こうじの言葉に、私はメイクの手を止めた。今まさに繰り出していたのは、広義の「赤」リップだ。この秋冬の流行であるテラコッタに近い色味は、いくつものブランドをはしごして手に入れた。私に似合う色を吟味して、...
ホラー

リトライアンドエラー

やってきたバスに乗り込んで、ほっと一息ついた。 東京から新幹線で、三時間弱。そしてさらに、地元の電車に乗った。だいぶ北にやってきたので、涼しいと思っていた。なのに、真夏の太陽は容赦なく、俺のことを焼き焦がす。 ガラガラの車内の、一番後ろの座...
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