次に歌うなら君へのラブソングを(17)

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16話

「ほ、本当にする?」

 ベッドの上に移動した司は、ウブなヴァージンに戻ってしまったかのような気分で、震えた。枕元に手をついた花房が、「いまさら、でしょう?」と笑う。

 公的な場面での爽やかイケメンスマイルではなく、獰猛で野性味溢れる微笑みに、頭がくらりと来た。鋭い目つきだから、こういう表情がやたらと似合うのである。

「いや、だってお前怪我してるし」

 それに、男は初めてだって言うし。

 ベッドに乗り上げた瞬間、真っ先に男との性経験を聞いた自分はグッジョブだった。何も知らずに流されて、花房にリードさせていたら、流血沙汰になっていたかもしれない。

 コンドームはかろうじて、昔買ったというものが部屋にあったけれど、問題は潤滑剤になるものだった。なければやめようと言ったのだが、花房はハンドクリームを持ってきた。元ギタリストだ。手のケアには気を遣っている。刺激になる成分も入っておらず、ローション代わりに受け入れる部分を解すのに使っても、大きな問題はなさそうだった。

「でもなぁ……」

 痛々しく残る、目元口元の暴力の痕に、司はしょんぼりする。細心の注意を払って触れても、やっぱり痛むらしく、眉根を寄せて不快そうな表情になった。

 けれど、怪我の苦痛もなんのその、花房は司のシャツのボタンに指をかけると、ぐいぐいと腰を押しつけてくる。平常時よりも硬度を増しているのがわかり、自分自身も同じようになってしまっているのを自覚する。

「キスとスキンシップだけで、蓬田先生もこんなになってるのに」

 忙しさにかまけ、恋人もワンナイトのプレイも、自慰行為ですらサボっていたせいだと言い訳をするのも格好悪く、司は唇を噛んだ。傷がつくのを嫌った花房の口が、再び近づいてくる。

「もう!」

 両手でガードして、ぐいっと押し返し、くるりとひっくり返して、花房の上に乗り上げる。行動の真意を捉えかねている彼の胸の上に両手を置いて、完全にごろんと上で寝転がる格好だ。

「蓬田先生?」

 不安そうな呼びかけに、司は笑う。

「今日は俺の、好きにさせろよ」

18話

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