『清らかな雪は白金の狐の愛にとける』(村崎樹)

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レビュー

最近ようやく原稿地獄を抜けたので、読書もしたいしレビューも書いていきたいぞ!

ということで再開一冊目はこちら。

『 清らかな雪は白金の狐の愛にとける』(村崎樹)

↑Amazonの電子書籍のページに飛びます。

投稿の先輩でもある村崎樹さんのデビュー作になります。
デビュー、おめでとうございます!

呪術師家系に生まれた雪華は霊力に乏しいため、自分に自信がない。
幼なじみで妖狐の焔に励まされ支えられている。
焔の両親は雪華の父に使役される金の毛並みをもつ管狐。
焔自身はそれより格の高い白狐のため、雪華の管狐になるよりも稲荷神の眷属になるべきと両親も雪華の父も考えている。
しかし焔は、雪華と一緒にいることを望んで……。

和風ファンタジーで時代モノ。
バトルもあれば子育て(と言っていいのか?)も楽しめ、さらにはロードムービー的な趣のある、盛りだくさんな作品です。
明治時代なので和装も洋装も楽しめるのがいいですね。
本編中では和装オンリーだった雪華(女装シーンも和装だった)も、今後の旅先では洋装してほしい。
あっ、でも黒髪サラサラロングヘアだと洋装似合わないかな……?


物語は主人公二人の子供時代から始まります。
この出だしのエピソードだけで、雪華がどれだけ優しい子なのかわかります。
子供時代から焔がイケメンなので、そりゃ恋もしますよって。
親の反対押し切って雪華の傍にいるべく管狐の道を選んだがゆえに、焔は結婚しなきゃならなくなります。
ここが最初のすれ違いポイントだったんだろうな……。
しかも美人の嫁さんが来るもんだから、雪華、当然焔とお似合いだ、と思います。
「その狐、お前さんにしか興味ないよ!」と、外野からは声をかけたくなりますね。

このお嫁さん狐の鈴蘭ちゃんが、いい女なんですよ!
気風のいい姉御肌。焔と雪華の関係をちゃんと理解してくれる。
なのにあんなことになろうとは……ううっ。
早く彼女を自由にしてあげてほしい。
頑張れ、雪華、焔。

樹先生(あえて先生と呼ぶ)もあとがきでおっしゃってましたが、志之輔ちゃん癒しでした!
もともとの十七歳青年設定だと、明らかに焔が嫉妬の炎(ギャグみたいだな)メラメラになりそうだし、三角関係待ったなし……。
それに志之輔ちゃんの家庭環境だと、十七歳まで生きてられなかったかもしれないし、生きていたとしてもっとずっとひねくれていたと思うので、五歳設定でよかったな。
諸事情によって大人びた振る舞いをしていた子供が、愛されることを知って子供らしい振る舞いをするようになるシーンは、やっぱり泣けます。
(まあでも十七歳の志之輔ちゃんは、それはそれで見てみたい)


雪華も焔がいなかったら、もっとずっと自分を抑える人間になっていただろうなあ。
大人しそうに見えて、実家を出奔してからの旅路では、焔にきゃんきゃん言い返すタイプだったので新鮮でした。

十三年間の二人の関係を描く話であり、雪華の成長譚でもあります。
依頼人に請われるがまま呪いをかけてしまったがゆえの失敗。
家を出て呪いを祓う専門になってからも、嫌な人間はいるもの。
正義と悪は完全に対立するものではないのだということを、雪華は学んでいきます。
それでもなお、人間とは善なるものであることを、登場人物たちは、雪華に教えてくれる。
呪いとなると、人間の闇に焦点が当たりそうなものですが、物語の根底にあるのは優しさでした。

BLなんだから、BがLしている感想も書けよ!
焔が「俺が呪った」と言うものだから、誤解する雪華。
読者には焔がどれほど雪華が大切なのか見え見えなんですが。
でも、彼が愛する者に「呪い」をかけた理由がわからずに、ワクワクしながら読み進めました。
「死なんて一瞬で終わる。それじゃ芸がない」とのセリフによって、呪いからくる痛みの緩和のためのセックスへの理由付けもされ、さらに雪華の恋心への切なさが倍増します。
ラストはラブラブでよかったです……が、「俺が育てた」はちょっとオッサン入ってるわよ、焔さん。

雪華の苗字が「八尾」というのも示唆的ですね。
焔の尻尾が合わさったら九尾! 二人がいれば最高最強じゃん!

なんてことを考えながら、読み終えました。

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