『追憶の烏』(阿部智里)

スポンサーリンク
レビュー

BL終わったので、非BLこれから三冊レビュー書く、予定。

『追憶の烏 八咫烏シリーズ 』(阿部智里)

↑Amazonの電子書籍ページに飛びます。

八咫烏シリーズ最新刊。
唯一文庫化が待てなくて全部単行本で揃えてる(イベントのタイミングによっては文庫も持ってる)シリーズです。

作者の阿部智里先生は、第一作『烏に単は似合わない』で第19回松本清張賞を受賞されました。
(松本清張賞のページ飛んだら、最新回の受賞者が99年生まれとかで、心臓が痛い)
(いや、松本清張賞狙ったことないから関係ないんだけど)

第一部最終巻『弥栄の烏』と第二部『楽園の烏』の間を埋めるエピソードである『追憶』。
『楽園』での雪斎(雪哉)による楽園に見せかけたディストピア支配に恐怖と疑問を覚えた我々に対する、阿部先生からの答えがここに。

第一章・花祭りと第二章・その夜(すでにこの言葉が不穏)の終盤までは、平和でした。
雪哉が若宮・浜木綿夫妻の間の姫君と、東領の花祭りに視察に向かったり、ずっと「くっつかないかなあ」と行っていた真赭の薄と澄尾が夫婦になってるのを知ってガッツポーズしたり。
(しかもラブラブ夫婦らしい。最高か)
(でもこの二人、名前しか出てこないのよね-。娘ちゃんは出てくるけれど)

『楽園』で出てこなかった若宮(即位してるけど通りがいいので)が、親馬鹿お父さんなのも微笑ましかった・・・・・・が。

若宮が浜木綿との約束を守るためだけに紫苑寺に飛んできたのが泣けました。
その後の彼女の錯乱も悲しくてなりません。

シリーズ全部面白いんですけど、何度も読み返したのは4巻『空棺の烏』です。
そこで初めて登場した明留。
彼もまた、若宮とともに命を落とします。
明留とさまざまな因縁を乗り越えて友好を深めていた千早が、彼の骨をきれいにするシーンは、涙が止まりませんでした。

若宮を殺したのは誰なのか。
中盤はちょっとミステリ仕立てに感じました。
一巻のことを思い出しますね。
『烏に単は似合わない』は、四人の妃候補が絢爛豪華なバトル・・・・・・に見せかけて、人死にの出るミステリでしたので。

『追憶』というタイトルどおり、この巻は『楽園』に至るまでの物語だけではなく、第一部のことを想起させたり、懐かしい登場人物が出てくる巻でした。
小梅が出てきたときなんて、一瞬、「誰だっけ?」ってなりましたからね!
(すぐ思い出したけど)
若宮の実の妹である藤波の宮が、一巻の事件後にどんな生活を送っていたのか・・・・・・ということも知ることができます。
彼女が、そして後宮の女衛士であった滝本が事件を引き起こすに至った過程が綴られています。
藤波と庭師の交流は、北の姫君であった白珠をもろに踏襲していますし、いろんな記憶が蘇りました。
そう、いろんな・・・・・・ウッ・・・・・・。

若宮には紫苑の宮という姫君しかいません。
日嗣の皇子(東宮)にしようといろいろ動いていましたが、実現には至っていませんでした。
雪哉と長束は、若宮の遺志を実現させるべく動きますが・・・・・・

読書中の私の叫び↓

↑多くを語れず、出てきた瞬間にこの一言だけツイートした。

いろんな記憶が蘇る、とは言いましたが、まさかここであの女が出てくるとは聞いていない。
どうしてんだろな・・・・・・とは思ったけれどさあ……。
げえええってリアルに声が出ました。
『烏に単は似合わない』は、正統派ヒロインめいたメインの視点人物が、実はラスボスだったり、一番(?)怪しい姫君が正ヒロインだったりというどんでん返しが魅力でしたが、ここでも立ちはだかるのかよ、お前・・・・・・。
しかもこれ、本人にはまるで悪気がないのが一番性質が悪い。

ここからの雪哉の心の動きがゾッとします。
『弥栄』のときにも怖いと思った彼の本性ですが、そのときは生まれたばかりの姫君によって、にんげんらしさを再び身につけていました。
が、姫宮は残念ながら、雪哉とともに逃げる道を選ばなかった。
雪哉の誘いを突っぱねた。
最後の分岐点だったのではないかと思います。

終章で、若宮そっくりな落女(女としての戸籍を捨て、男として宮仕えする者)が官吏登用試験を受けにきます。
元の名を葵。それは澄尾と真赭の薄の娘の名前。
けれど、彼女は本当に「葵」なのでしょうか。
病弱な葵は、双子の姉妹の茜とは違い、ずっと表舞台には出てきませんでした。
入れ替わることは、いくらでも可能です。
彼女の男としての名、澄生には、澄尾の娘だからという意味もあるのでしょうが、他の意味を感じてなりません。

すみき・・・・・・「すみ」という真名の女性の姿を、どうしても探してしまうのです。

次巻も楽しみです。

表裏一体の『烏に単は似合わない』『烏は主を選ばない』はコミカライズされています。

 

 

『烏に単~』は全4巻完結、『烏は主を~』は、現在2巻まで発売中です。

雪哉……こんなに可愛かったのになぁ……はぁ。

ランキング参加中!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村 小説ブログ 小説家志望へ
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ



コメント

タイトルとURLをコピーしました