秋の読書週間~。
「詩剣女侠」(春秋梅菊)
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これまた2020年の集英社ノベル大賞最終候補です。
よくありそうな中華ファンタジーと思いきや、めちゃくちゃ骨太な時代小説でした。
後宮! 恋愛! みたいなのを想像している方向けではないです(陰謀はアリっちゃアリ)。
たぶんこれ、少年漫画の主人公の成長を何よりの好物としている人の方が楽しめるんじゃないかなあ。
剣舞をしつつ、岩(岩紙)に詩を刻みつけるという技芸が流行している明。
(ここで注目したいのは、歴史上に実在した国の名前を出しているということ。李白とか、聞き覚えのある名前も出てくる。完全架空のファンタジーではない)
志半ばで倒れたお嬢様の遺志を継ぎ、仇討ちを果たそうとする侍女の春燕が主人公。
元々孤児で、斐家の主人に買われたという経緯から、とにかく春燕がウジウジしています。
「私なんてどうしようもない」と卑屈になっている様子だけ見ると、途中で放り投げそうになります。
が、彼女にはお嬢様という原動力があります。
死してなお、要所要所で主人公に関わり励ましてくれるお嬢様。
彼女のために前へ進んでいく春燕が、詩剣の技だけではなく、心も成長していくのがすがすがしい。
何よりも魅力的なのが、表紙にも描かれている二人の師匠!
陸破興と韓九秋。
正反対でいがみ合っているばかりの二人。
でも、口には出さないし、「褒めるべきところはある」なんて素直じゃないけれど、実力は互いに認め合っている二人・・・・・・
あれ?
これ、BLの関係性に近いのでは?
(違います)
(どっちが攻めかは決めかねる)
(やめろ)
いやでも昔から言うじゃないですか。
男二人に女一人の組み合わせは、だいたい男二人がいちゃついているように見えるって。
え? 言わない?
そんな馬鹿な。
はい、真面目な感想に戻します。
見ず知らずの自分によくしてくれる二人に、最初にお嬢様の名を騙ってしまったばかりに、罪悪感を募らせる春燕。
そして言えないでいることを、赤の他人に暴露されるのは本当に辛い。
お嬢様の形見を折られたり、いろいろ大変な目に遭うけど、まさか敵討ちのために参加しなければならなかった大会に、出場できなくなるとは思わなかったよ・・・・・・。
本当、ここは「どうなっちゃうんだ!?」と、ハラハラドキドキしました。
まぁそのおかげで、師匠ズのめちゃくちゃ格好いい姿が見られたわけだけど!
春燕が、周りの嘲りに惑わされて負けてしまうのもリアルだった。
そして負けたことで強くなり、師匠たちと協力することで進化するの、やっぱり少女漫画のキラキラというよりも、少年漫画(というか、スポ根漫画)の泥臭さがありました。
中華モノの流行に乗ると、春燕は師匠ふたりの間で揺れ動く恋愛脳ヒロインになりそうだけど、どちらともそんな雰囲気に一切ならないのがよかったです。
(恋愛は恋愛で楽しめるけれど、これはそういう楽しみ方をする小説ではない)
時代モノには、勧善懲悪がふさわしいですね。
周りを味方につけてのクライマックス、最高に気持ちよかったです。
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