獣神様とは番えない~アルファの溺愛花嫁さま~(村崎樹)

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レビュー

久しぶりにBL小説を買って摂取しました。

やっぱりいいねえ~。

「獣神様とは番えない~アルファの溺愛花嫁さま~」(村崎樹)

タイムリミットが近づいている。
獣神様には番が必要で!?

獣に姿を変え国を護る獣神には「薬花」と番わなければ解けない呪いがあるというーー。オメガ狩りに追われていたルークは、アルファで黒狼の獣神オーウェンに攫われ花嫁にされてしまった。わけもわからず薬花と呼ばれ、番になれと要求されて!? しかし彼の秘められた想いを知り、冷徹傲岸に見えた行動もルークを溺愛するがゆえのもので…。だが、いくらオーウェンを受け入れたくても、ルークはアルファと番にはなれないオメガだった!?

あらすじ

ルークの庶民感がすごくよい。
オメガだけで守り合い、助け合いながら暮らす集団から抜けて、盗人稼業でひとり生き抜いていた・・・・・・
なんていうと、ものすごく世慣れていてスレた人物像を想像します。
が、彼は被差別階級であるオメガのサークルの中でも差別されてきた、という辛い過去を持ち合わせながらも、「しっかりと親に愛されてきた」という事実、そして自覚のある人なので、感覚がとてもまっとうでした。
自分が盗みをして生きてきたことを、母は喜ばないだろうと自覚しているあたり、とてもまっとうな大人。
あと、意外にも処女!
オメガで、成人していて、処女!!
(声を大にして二度言う)

攻めのオーウェンはそんなルークよりも年上なのですが、人間関係を築くことに関してはポンコツです。
よかったね、聡い受けと出会うことができて・・・・・・。

同じ館で暮らすテッド(こぐまちゃん)とシェリー(トラ娘)も可愛く魅力的。
お誕生日会をすることに戸惑うテッドを説得するルークが、口から先に生まれたんかっていうくらい上手でした。
シェリーはツンツンしてルークを「獣神様にふさわしい花嫁様にする!」と頑張っているのですが、実はそこには獣神にまつわる秘密があって・・・・・・。

敵国に攻められる直前に急遽結婚した理由を、ルークは建前上しか知らなくて、オーウェンからもたらされる彼の本心を、初夜前にようやく知ります。
ここがぐっとくるんですよ。
ルークはオーウェンのために、他の薬花(についての説明をこのレビューでは省いているので、本を読んでね!)に彼を委ねて再びひとりになろうとし、オーウェンは国民を長く守り戦い続けなければならないという役目よりも、ルークとともにあることを優先する。

このシーンでのオーウェンのセリフに、

「(前略)その未来を選ばなかったのは、ただただ俺の我が儘だ」
「俺はルークを愛してしまった。俺だけのルークであってほしい、自分もまたルークだけのものでありたいと願ってしまった。だから獣神として正しい選択ができなかった」

本文186ページ

というのがあります。
愛というのはまさしく我が儘なものなのだ、と。
そして我が儘でいいのだ、と。
自分の命よりも優先するものがある、現実ではなかなかできないからこそ、物語(特にファンタジー)(私はファンタジー=人の生き死にが軽いと思っている)では、そういう愛が見たいものです。

ルークが元々いた国では、オメガが差別されたり、オメガ狩りが密かに行われ、人身売買の標的になったりしています。
そこまではオメガバースでは、よくある設定なのですが、興味深いのは、

「オメガのサークルの中ですら、自分たちと違う者を排除する傾向にある」

という点です。
弱く虐げられている者たちは、決して優しいだけの人たちじゃない。
むしろ一致団結しているからこそ、内側にいる異質なものへの攻撃は、容赦がないのではないか。
人間って確かにそういうところがあるよなあ、と思いました。
はっ! これって社会派BL・・・・・・?(ちがう)

薬花やルークが発情しない設定について、最後は「なーるほどね!」となりました。
特にラスト一文読んで、

「そういや運命のつがい云々って一度も出てこなかったわ!」

って、なんともカタルシス~。

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