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ごえんのお返しでございます

ごえんのお返しでございます【1】

十二月を師走というが、「師」を「教師」に限定すれば、四月も同じくらい慌ただしいものだと、端から見ていて思う。  一年でやらなければならないカリキュラムは決まっていて、それなのに、健康診断やら歓迎会やらで、授業時間は限られる。五月末の中間テス...
短編小説

旬を過ぎたら、

「旅行に行かないか?」  付き合いで見始めた映画が案外面白く、夢中になっていたせいで、反応が一瞬遅れた。 「え」  トシキの顔をまじまじと見る。彼はまっすぐにテレビを見ていて、一見すると、映像にのめり込んでいる様子だ。  けれど、本当は違う...
短編小説

ひと月遅れのアドベント

黒板の横にかけられた日めくりカレンダーも、だいぶ薄くなった。日直でもないのに、今月になってから、毎朝毎朝破り捨てた甲斐があるというもの。  明日から十二月。誰もが心躍る、あのシーズンの到来。 「あ、おはよう!」 「はよ……今日も無駄に元気だ...
短編小説

梅雨に彩花

大きく武骨な手から、丁寧な文字――読みやすい、とは言わない。癖はない。だが、ちまちました文字は、老眼鏡にクラスチェンジしたと噂の担任には、読みにくいに違いない――が生まれるのは、興味深い。  この年になってやることはないけれど、昔はてのひら...
レビュー

『神招きの庭2 五色の矢は嵐つらぬく』(奥乃桜子)

今年があと2ヵ月しかないことに、絶望しています。 2021年のノベル大賞、間に合うのだろうか……。 『神招きの庭2 五色の矢は嵐つらぬく』レビュー 本日のレビューはこちら。 『神招きの庭 2 五色の矢は嵐つらぬく』(奥乃桜子) 姉妹作といえ...
短編小説

海を泳ぐ月

廊下側の後ろから二番目の席は、ほぼ対角線上にある、窓際の一番前にいる彼を観察しやすくて、私のお気に入りの席だ。 「森もりー。森海かいー。ここの訳」  その後三回、先生は彼の名前を呼んだ。ようやく自分があてられていることに気がついた森くんは、...
短編小説

魔女の爪は赤い

「なぁ。その赤い口紅、やめない?」  浩司こうじの言葉に、私はメイクの手を止めた。今まさに繰り出していたのは、広義の「赤」リップだ。この秋冬の流行であるテラコッタに近い色味は、いくつものブランドをはしごして手に入れた。私に似合う色を吟味して...
ライト文芸

高嶺のガワオタ(45)

<<はじめから読む! <44話  飛天が高岩が講師を務める養成所に通いだして二ヶ月弱が過ぎた、六月頭。  飛天は空港にいた。 「わざわざ見送りに来てくれて、ありがとうございます」  にっこりと微笑んだ映理の傍らには、機内持ち込みサイズぎりぎ...
ライト文芸

高嶺のガワオタ(44)

<<はじめから読む! <43話 「十年近く前のことを言われても、と晒したアカウントを憎みました。大きな仕事が決まったのに、全部ダメにされた。その傲慢さをきっと、見透かされていたんだと思います。一部の特撮ファンからは、厳しい意見が続出しました...
ライト文芸

高嶺のガワオタ(43)

<<はじめから読む! <42話  パソコンはじめ、機材は次郎に借りた。スマートフォンからでもできるらしいが、やり直しがきかないから、しっかり大きな画面で確認しながらやりたい。  次郎は心配そうにしていたが、飛天が大丈夫だと肩を叩くと、小さく...
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