ごえんのお返しでございます ごえんのお返しでございます【1】 十二月を師走というが、「師」を「教師」に限定すれば、四月も同じくらい慌ただしいものだと、端から見ていて思う。 一年でやらなければならないカリキュラムは決まっていて、それなのに、健康診断やら歓迎会やらで、授業時間は限られる。五月末の中間テス... 2023.08.23 ごえんのお返しでございますライト文芸
短編小説 旬を過ぎたら、 「旅行に行かないか?」 付き合いで見始めた映画が案外面白く、夢中になっていたせいで、反応が一瞬遅れた。 「え」 トシキの顔をまじまじと見る。彼はまっすぐにテレビを見ていて、一見すると、映像にのめり込んでいる様子だ。 けれど、本当は違う... 2022.12.02 短編小説青春
短編小説 ひと月遅れのアドベント 黒板の横にかけられた日めくりカレンダーも、だいぶ薄くなった。日直でもないのに、今月になってから、毎朝毎朝破り捨てた甲斐があるというもの。 明日から十二月。誰もが心躍る、あのシーズンの到来。 「あ、おはよう!」 「はよ……今日も無駄に元気だ... 2021.12.04 短編小説青春
短編小説 梅雨に彩花 大きく武骨な手から、丁寧な文字――読みやすい、とは言わない。癖はない。だが、ちまちました文字は、老眼鏡にクラスチェンジしたと噂の担任には、読みにくいに違いない――が生まれるのは、興味深い。 この年になってやることはないけれど、昔はてのひら... 2021.04.28 短編小説青春
レビュー 『神招きの庭2 五色の矢は嵐つらぬく』(奥乃桜子) 今年があと2ヵ月しかないことに、絶望しています。 2021年のノベル大賞、間に合うのだろうか……。 『神招きの庭2 五色の矢は嵐つらぬく』レビュー 本日のレビューはこちら。 『神招きの庭 2 五色の矢は嵐つらぬく』(奥乃桜子) 姉妹作といえ... 2020.11.08 レビュー商業小説・漫画
短編小説 海を泳ぐ月 廊下側の後ろから二番目の席は、ほぼ対角線上にある、窓際の一番前にいる彼を観察しやすくて、私のお気に入りの席だ。 「森もりー。森海かいー。ここの訳」 その後三回、先生は彼の名前を呼んだ。ようやく自分があてられていることに気がついた森くんは、... 2020.11.06 短編小説青春
短編小説 魔女の爪は赤い 「なぁ。その赤い口紅、やめない?」 浩司こうじの言葉に、私はメイクの手を止めた。今まさに繰り出していたのは、広義の「赤」リップだ。この秋冬の流行であるテラコッタに近い色味は、いくつものブランドをはしごして手に入れた。私に似合う色を吟味して... 2020.10.31 短編小説
ライト文芸 高嶺のガワオタ(45) <<はじめから読む! <44話 飛天が高岩が講師を務める養成所に通いだして二ヶ月弱が過ぎた、六月頭。 飛天は空港にいた。 「わざわざ見送りに来てくれて、ありがとうございます」 にっこりと微笑んだ映理の傍らには、機内持ち込みサイズぎりぎ... 2020.10.01 ライト文芸長編小説高嶺のガワオタ
ライト文芸 高嶺のガワオタ(44) <<はじめから読む! <43話 「十年近く前のことを言われても、と晒したアカウントを憎みました。大きな仕事が決まったのに、全部ダメにされた。その傲慢さをきっと、見透かされていたんだと思います。一部の特撮ファンからは、厳しい意見が続出しました... 2020.10.01 ライト文芸長編小説高嶺のガワオタ
ライト文芸 高嶺のガワオタ(43) <<はじめから読む! <42話 パソコンはじめ、機材は次郎に借りた。スマートフォンからでもできるらしいが、やり直しがきかないから、しっかり大きな画面で確認しながらやりたい。 次郎は心配そうにしていたが、飛天が大丈夫だと肩を叩くと、小さく... 2020.10.01 ライト文芸長編小説高嶺のガワオタ