愛奴隷~Idol~(25)

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24話

 キャスト挨拶ではオールアップの際ももらったが、登壇後に花束を渡された。それを胸の前に抱きながら、貴臣は挨拶をこなした。不審に思われなかったとは思うが、実際泣きそうだった。壁の花を気取るには目立ちすぎる牛島が、貴臣のことをじっと見ていたからだ。誰も注目していないのをいいことに、柔和な表情は鳴りを潜めて、ただじっと、貴臣を見ている。

 まるでセックスのときみだいた、と思った。視線でがんじがらめに縛られて、射抜かれる。撮影される妄想が一番興奮する貴臣は、視姦されるのにも弱かった。そのときと同じ視線で見られている。スポットライトを浴びる、余所行きの顔をした自分を。服の上から犯されている。

 ホテルの宴会場に設けられた低いステージから降りる。ふらつかないようにするのでいっぱいいっぱいだった。ヒロイン役を演じた女優が貴臣の次に登壇する。ふらふらと壁に手を伝わせて身体を支えながら部屋の隅に行こうとしたところで、腕を強く掴まれた。

 牛島だった。

 彼は貴臣を引きずると、トイレへと連れ込んだ。パーティー会場である宴会場からは一番遠い、ホテルの中でも人目につきにくい場所ではある。

 端の個室へと貴臣を押し込むと、自分も中へ入り、鍵を閉めた。

「なん、で……」

 聞きたいことは二つ。なぜパーティー会場にやってきたのか。そしてなぜ、ここに連れてきたのか。

 後者についてはすぐにわかった。貴臣の身体を撫でる指から伝わってくる性的なアプローチから、ここで事に及ぼうとしているのだとすぐさま判断できた。当然、貴臣は抵抗する。こんなの契約不履行だ、と。

「あの部屋でだけって、言ったじゃないですか……!」

 人前で恋人であるようにふるまわない。あの部屋で肉体を重ねて快楽を貪り、精神的に支配する者と支配される者とに分かたれる。そういう関係が心地よかったのであって、どこででも抱かれたいと思ったことなどない。

 しかも今は仕事仲間たちが大勢いるパーティーが催されている段階で――勿論貴臣の念頭にはまず、昴のことがある――、直に腹筋に触れてくる手に酔い痴れることなんてできやしない。いつばれるかと思うと怖くて、貴臣は抵抗をする。

 だが狭いトイレの中、大きな音を立てないようにしようとすれば、自然と抵抗も弱まる。やすやすと牛島によって腕を封じられ、見つめあう羽目になった。

 ぞくり、と震えたのは明らかに恐怖だった。今までも牛島を怖いと思ったことがないわけではないが、目の奥にはそれでも自分の奴隷に対する信愛の情が宿っていたから信じられた。

「うしじま、さ……」

「君は俺の、何?」

 温もりのかけらもない声。貴臣が震えていると、もう一度牛島は同じ質問をした。

「君は俺の、何だったっけ?」

「……どれい、です……」

 そうだよね、可愛い俺の貴臣。

 牛島が貴臣の頬に触れた。見られていると興奮するのに、でも今は。

「奴隷がご主人様に逆らって、いいと思っているの?」

 貴臣は黙って首を振ることしかできなかった。

26話

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