クレイジー・マッドは転生しない(47)

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クレイジー・マッドは転生しない

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46話

 事件は二つ、犯人も二人。もしかしたら黒幕はひとりなのかもしれないが、その可能性はとりあえず置いておこう。

 探偵団は二人から三人になった。泣き腫らした目からコンタクトを取り外し、眼鏡にチェンジした柏木は、いつもよりも知性を感じられる顔立ちをしている。そして相変わらず呉井さんは、ホームズ気取りのコスプレだ。

「『美少女探偵 ミラクル☆ホームズ』……」

 ああっ、俺が思っていても言わなかったことを! 

 案の定、呉井さんが「なんですか、それは?」と食いついているじゃないか。話が脱線して戻ってこられなくなるから、言わなかったのに。

 ちなみに『美少女探偵 ミラクル☆ホームズ』は、シャーロック・ホームズを始め超有名な探偵たちが全員美少女化した萌えアニメだ。俺は断然、ロリババアのマープル推しだけど。

 柏木が早口で説明しかけたのを見て、「ところでさ、これからどうする?」と不自然なほど大きな声で遮った。オタク、自分の領域の話、とても長い。

「そうですわね……」

 呉井さんは唇に人差し指をあてて考える。柏木が俺の肩をバンバン叩く。仙川による攻撃と同じくらい痛いのはなぜだ。彼女が言いたいことはわかる。「本当に、アニメのホームズちゃんみたいじゃない!」と、声にならない萌えを感じたのだろう。わかってしまう自分が悲しい。

「柏木さんを脅迫した人間については、うちのセキュリティ担当者に調べてもらうよう、恵美に頼みましたから、わたくしたちは手帳の件に集中すべきなのでしょうが」

 何から手をつけましょうか、と呉井さんは俺を見た。名探偵の格好は見せかけだ。勉強はできる。普段の生活へ知識を発展、応用する力だってある。けれど肝心な、アイディアはなかなか出てこない。そういうややポンコツなところも、こうやって深く付き合わないと見えてこなかったことだ。

 迷探偵のフォローは、助手の役目だろう。俺は思案する。ちなみに柏木、聞く態勢を作ったまま俺と呉井さんを交互に見つめて待機。考えることを放棄している。

 ここで何かいい案を出さなければ、また聞き込みだ。場所が音楽室近辺から、俺たちの教室に変わるだけの違いに過ぎず、解決する気がしない。

 外に聞き込みに行くのだけは避けなければならない。それなら、内に求めてみればいいんじゃないか?

 内、すなわち。

「呉井さんさ、何か変わったことなかった? 誰かにその、恨まれるようなこと、しちゃったとか」

 Who、ではなくてWhyを追及することで、新たに見えてくるものがあるかもしれない。

 ちょっと言い方が悪かった自覚はあるので、一応フォローしておく。

「勿論呉井さんが、そんな意地の悪いことをするとは思ってない。でも、相手の受け取り方次第だから、逆恨みされることは十分考えられるだろ」

 山本みたいに、と付け足したくなった。あれこそ逆恨みの極みだろう。あいつが努力しているのはわかる。でも、絶対的な力が違うとしか言えない。普通なら、諦めるべきだろう。だが、あいつは折れない。それだけならすごいと感心するところだが、山本の悪いところは、呉井さんを始めとして外部に攻撃的になるところだ。

 呉井さんは、俺の言葉を受けて考え込んでいる。柏木と二人並んで、待機。思考の邪魔をしないために、黙り込んで彼女を見守るのみだ。

48話

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