『海辺のリゾートで殺人を』(楠田雅紀)レビュー

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レビュー
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ひとつめの謎は解けても、真相は見抜けない…かも? 

はい。ここからはネタバレありでーす。わかっていると思いますが、ご注意くださーい。

冒頭からミスリードしてやろうという気持ちを感じます。ここだけ瑞樹の視点じゃないんですよね。これで阿久津が犯人(含む共犯)だったとしたら、読了後にぶん投げていた可能性(ひどい)。

ミステリ先行作品へのオマージュ

最初のページでも嫌というほど語りましたが、新本格と呼ばれるジャンルが好きです。
ミステリを読み始めたときは、この手のばっかり読んでいました。
何らかの理由で閉鎖空間に閉じ込められる人々。外との連絡手段も断たれる中で発生する殺人事件。最近だと『屍人荘の殺人』がありましたね。

映画しか見ていないのですが、見終わった瞬間、「いや、メルカトル鮎やん!?」と思いました。(わかる人だけ拾ってほしいネタ)

雪の山荘やら陸の孤島みたいな場所よりも、リゾートだから幾分、不気味さは和らいでいます(笑)。

『金田一少年の事件簿』、楠田先生はお好きなんじゃないかしら……? 
強いオマージュを感じます。私も好きです。
自分勝手な理由から裁かれない罪を犯した被害者たち、どんなことをしても復讐しようと誓う犯人。金田一に暴かれて、動機を吐露するシーンが好きです。
この物語も、犯人が動機を語る場面がぐっと来ました。

あとは単純に、

  • オープン前のリゾートに抽選で招待
  • 電話やネットが繋がらない
  • 主人公・瑞樹が一緒に来る予定だった人の名前を騙る

といった要素に対して、「悲恋湖……! 悲恋湖殺人事件や……!」と思いました。

信用できない攻めと受け

ミステリ用語(テクニック)で「信用できない語り手」というのがあります。

日本の小説の多くは、三人称であっても、誰か一人、視点人物を決めて描かれています。我々読者は、彼(あるいは彼女)の目を通して事件を追っていくのですが、それは「信用」あってのことです。

もしも視点人物が、何かを意図的に隠そうとしていたら?
あるいは、意図的でなくとも、様々な理由で、重要な何かを意識することができないとしたら?
そもそも、読者が視点人物だと思っていた人が、まったくの別人だったら?

ストーリーは大きく変わります。これを利用した叙述トリック作品が、たくさん刊行されています。個人的には物理トリックより好きです。物理は想像力が限界☆になるので、映像で楽しみたい……。

あ、あと代表的な作品は、ネタバレにもほどがあるので出しません。

で、冒頭でまず、「この攻めは何を企んでいるんだ……?」と思わせます。
犯人ミスリードにはまず引っかからないですが、少なくとも訳アリっぽい。

そして受けもまた、家族に恵まれず、死への恐怖が希薄である様子、姉への想いを小出しにしながら、不安を煽ってきます。

主人公以外で名前があって目立つ人間が嫌な奴ばかりな上に、主人公ズも「え、どうなんの?」って感じなので、支配人の花井さんが心のオアシスでした。

真実

二件の殺人と二件の殺人未遂の犯人については、たぶん途中でなんとなくわかると思います。(ちなみに私は、なんとなくで犯人をあてるのが得意)

主人公・瑞樹の姉がどんな風に亡くなったのかを追うことによって、動機も見えてくるからです。

ということで、本当に瑞樹が「信用できない語り手」だったわけですね。わーびっくり。

残りページもわずかになってきたところで、BLファンとしての私が焦り始めます。

「えっ。攻めと受けがまだキスしかしてないよ!? しかもイラストを先に見ちゃうタイプだから、この後ベッドシーンあるんだけど、まさか出所後……?」

と思っていたら、ここで最後にどんでん返し。

まさかの誰も死んでないっていう……

いや、これは予想してなかった。でも納得した。誰も死んでなくて、断罪されて被害を訴えなければ、事件にならないもんね。そりゃ、ラブラブセックスもできますわ……。

当然、協力者なしには隠蔽も何もできないので、ここでも大活躍の花井さん。彼が協力した理由を読みながら、涙腺決壊。

ラストはお姉さんの名誉も回復して、まさしく大団円でした。

ミステリ読みとして、本当に面白かったです。

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