可愛い義弟には恋をさせよ(23)

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22話

 津村に連れてこられたのは、会社の近くにある創作和食が売りの居酒屋チェーンだった。ごちゃごちゃとうるさくない看板や、すべて半個室に区切られたテーブル席が若い女性を中心に人気だという。圭一郎自身は居酒屋にムードとか雰囲気といったものを求めていないので、初めて入った。

 とりあえず、と注文したビールが届き、乾杯をしてから、津村は「天野さんが最近、何かに悩んでいるような気がしたので」と、今日飲みに誘った理由を語った。

 職場でも津村は、圭一郎の様子を敏感に察知して、数々のパソコントラブルを軽症のうちに対処してくれるわけだが、これ以上、プライベートまで後輩に依存するわけにはいかない。

 圭一郎ははっきりと、「別に津村に相談するような内容でもないよ」と言ったが、彼女は強い意志を見せた。いつもと違うメイクに背中を押されているかのように、一歩も引かない。

 話題を逸らすこと注力するが、圭一郎はお喋りではあるものの、トーク力が抜群というほどではない。自分の意のままに相手の意識を向けさせるような芸当はできずに、「それで、先輩はいったい何を悩んでるんですか?」と、何度も振りだしに戻ってしまう。

 ジョッキに残ったビールを一気に飲み干し、圭一郎は、「弟と初めて喧嘩をした」と半ば自棄になって告白した。案の定、津村は目を瞬かせる。パチパチと瞼が上下する度に、ラメが光り、圭一郎の視線を惹きつける。

「初めて、って、そんなことあります? うちも妹がいますけど、子供の頃から、しょっちゅう喧嘩してましたよ?」

 信じがたいという顔の津村に、圭一郎はかいつまんで自分たちのことを話した。もちろん、弟がゲイであるという極めて個人的な情報や、圭一郎が彼と恋人の真似事をしていたことは、巧妙に隠した。話さなくても、だいたいの中身は理解できるだろう。

 向かい側で、飲食を忘れて圭一郎の身の上話に付き合っていた津村は、話が終わるとすぐに、「天野さん、弟離れした方がいいです」と真顔で言った。

24話

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