高嶺のガワオタ(42)

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ライト文芸

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41話

 晩秋の季節でも、子供たちは元気だ。ぴったりした素材のスーツは夏はあんなに地獄のように暑いくせに、冬はどうして寒いのだろう。

 それでも、激しい動きに次第に息が弾み、身体が熱を持つ。単純に運動によるものではない。練習場での入念なリハーサルのときには感じなかった熱狂が、飛天の心と身体を支配して、高揚させる。

 飛天にとっては、懐かしい、覚えのある感覚だった。

 薄暗いがらんどうの空間でのリハ。勿論一生懸命にやる。だが、本番はやはり違う。まばゆいステージからのライトに照らされた、キラキラした笑顔は何よりも、力になる。

 自分の演技にシンクロして、笑ったり涙したり、感情移入をしているのが、舞台上からでも結構見える。その度、胸が熱くなる。

 今も同じだ。あの頃の飛天をアイドルにしてくれたのは、ファンの女の子たちだった。そして今の飛天をヒーローにしてくれるのは。

「レッド~! がんばれ~!」

 舌足らずな声援と、満面の笑顔。番組を見ていたら、軽いノリのレッドだったので、飛天はアドリブで、子供たちに向けて手を振った。アイドル時代を思い出した。

 誰かに見てもらいたい。より多くの人に、見てもらいたい。今はこの、展示場が精いっぱいだけど。

 敵怪人を倒して、最後は決めポーズ。そしてエンディングのダンスを踊る。飛天にとっては、ごくごく簡単な動きだ。番組を見て毎週踊っている子供たちも、飛天に合わせて踊る。

 大きく手を振ってテントの中に戻る直前、後ろの方で手を叩く映理が見えた。誰よりも大きく、拍手を贈ってくれる。

 ありがとう。

 胸のうちで、そっと呟く。

 映理がいなければ、この胸の高鳴りを再び味わうことができなかった。いつまでも家に引きこもって、今もいじけた奴のままだったに違いない。

 テントの中でマスクを外して、飛天は拳を握り、喜びをかみしめる。

「何してんだ。まだ午後からワンステージ残ってんぞ」

 今日は裏方に徹していた高岩が、飛天の背中を強く叩いた。

「……はい!」

 激励も籠った掌に、飛天は大きく頷いた。

43話

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