断頭台の友よ(57)

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56話

 翌早朝、サンソン家に宿泊したオズヴァルトとともに馬車で出発した。最初は小回りのきく馬の予定だっただが、万が一クレマンの予想が正解だった場合、オズヴァルトが帰りも馬で帰ってこられるのか不安だったので、どうにか言いくるめて、馬車に変更することに成功した。

 王都郊外、と言えば可愛いものだが、周辺は貧民窟と言ってもいいほどの荒廃をさらしていた。オズヴァルトはあたりを見回して、「こんなところに、イヴォンヌが来るはずがない」とつぶやいた。自身に言い聞かせているようだった。

 教会もまた、貴族や裕福な民が行く場所とは違っていた。クレマンもオズヴァルトも、祈りや礼拝への参加を欠かさない敬虔なる信徒ではあるが、教会組織というものには懐疑的である。寄進された金の行き先を、誰も知らないからだ。

 建物自体は古く、今にも朽ち果ててしまいそうだったが、近隣の家々とは違い、修繕の形跡が見られた。よく観察してみれば、庭も手入れされている。羽振りのいい教会に集まった寄付金を、こういうところに回せばいいのに、とクレマンが言うと、オズヴァルトも同感だと頷いた。

 中も外と似たり寄ったりだった。扉を開けてすぐの礼拝堂の床の隅は、明らかに腐っていると見えた。一方で、踏み抜かれてしまったのだろう、新しい床板がはめられている箇所もある。クレマンはそろそろと歩みを進め、後方の座席にオズヴァルトと並んで座った。

 旬日の礼拝前の空気は、荘厳さとはかけ離れていた。クレマンがいつも行く村の小さな教会は、子供たちが耐えきれずに喋ることはあるが、少なくとも大人たちがたしなめる。この間までおしゃべりする側だった子供が、お兄さんぶって「しーっ」と、弟妹たちにやっている姿を見ると、胸があたたかくなるものだ。

 だが、ここの雰囲気は違った。自宅の居間か公園にいるように、そこらじゅうで大人たちが率先して会話をしている。声をはばかることもなく、大笑いしている主婦たちもいる。

 本当に同じ教会か?

 不安に駆られたクレマンたちの隣を通り、黒い服を着た司祭が登壇した。

58話

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