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<54話
夢を、見ていた。傷ついた自分を救ってくれた、憧れのアニマル・コーディネーターがそこにいた。自分と同じ目に遭った子供たちを救いたい、同じ目に遭った自分だからこそできることをしたい。そう考えて、ヒューマン・アニマル・コーディネーターになろうと決めた、あの日のことだ。
『そうだね。君にしかできないことがきっとあるよ。でもね、忘れないでほしいんだ……』
その後なんと続けたのか、俊はようやく、思い出した。
『憎しみではなく、愛だ。僕たちの仕事に一番大切なのは、愛。人を愛し、動物を愛す。それと同じように、けれどひとりひとりに対して、それにふさわしいように、愛するんだ。それがすべての、秘訣さ』
尤も、君はもう、わかっているだろうけれど――
そう、彼は笑った。自分に対して向けられる愛なのだ、と俊は思った。
目を覚ますと、隣には湊の寝顔。今までたくさん泣かせてきたし、きっとこれからも泣かせることがあるだろう。けれど、それ以上にもっともっと笑わせて、いや、共に笑いあう未来を。
――それが、愛だ。
この逞しい腕の中が、自分の帰る場所だ。そう決めた。
まだ薄暗い部屋の中、再び目を閉じる。ここが、そう甘い、甘い、愛のある場所――
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