迷子のウサギ?(エピローグ②)

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エピローグ①

「わかっていたんだろう?」

 コーヒーを飲みながらの笹川の台詞に、高山は「なにが?」と首を傾げた。

「とぼけなくてもいい。あいつらがこうなるってこと、お前にはわかっていたんだろう?」

 あいつら、というのは高山の教え子である三船俊と、誘拐されてウサギのヒューマン・アニマルとなってしまった倉橋湊のことだ。二人で住むには変わりないが、一応けじめとして、と笹川と高山のところに「同棲することになりました」と挨拶に来たのは、つい先日のことだ。

 湊はウサギのヒューマン・アニマルとして、しかし一人間として生きていくと覚悟を決め、いかなる差別にも負けたくないのだ、と外に出るようになった。勿論、周囲の目は好意的なものとは言い難いが、俊がいつも隣にいる。

 お互いにお互いを思いやる、理想的な恋人関係。そのように、高山には見えた。

「二人が付き合うって? まさか」

「……嘘だな」

 そう思うのならば、それでいい。高山は肩を竦める。

 ――まぁ、三船くんがウサギを許して、愛を知るならそれでいいと思ってはいたけれどね。

 おかわりいる? と高山が尋ねると、笹川は黙ってカップを差し出した。どうやらもう、今日は仕事をするつもりはないらしい。

 コーヒーの準備をしていると、笹川の携帯に着信があった。誰だ、とぶつぶつ言っていたのに、電話に出るときは、とても優しい声になっていたから、名前が聞こえなくても、高山には相手が誰かわかった。

 ――君たちもこうなるってわかってた、って言ったら、どんな顔をするのかな、君は。

 男に抱かれることしか知らず、悪戯ばかりしている大型犬のヒューマン・アニマルと、いつも眉間に皺を寄せているクールなコーディネーター。引き合わせた瞬間から、高山はなんとなく、二人が愛を育んでくれたらいいな、と思っていた。

「ああ、うん。わかった……」

 すぐ帰る、と言って通話を切った笹川に対して、「ポチくんかい? コーヒーできたけど……これは僕が飲んでしまおう」と高山は笑った。

 そうすると笹川は普段のクールビューティーな横顔を歪めて、「すまん」と言った。困ったような、けれども嬉しそうな表情に、高山はうんうん、と頷いた。

 ――この世界を愛でいっぱいにすれば、人も、ヒューマン・アニマルも幸せに暮らせるよ――

 そう、教えてくれた人がいた。柔らかい笑顔の持ち主で、傷ついた高山を慈しみ、支えてくれた、大好きな人。

「あなたの言った通り、愛はみんなを幸せにするね」

 だから僕は、キューピッドみたいな真似を、やめられないのさ……

 そう嘯いて、高山はコーヒーを一口飲んだ。笹川用だったから、ブラックのままで、「苦っ」と舌を出した。

 外の天気は良好で、恋人たちをまるで、祝福しているようだ。高山はそう思った。

(終わり)

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