みんな愛してるから

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百合子(1)

<<はじめから読む! <「夏織」18話  ローストビーフにチャーシュー。それからチキンロールに、ステーキ。皿の上にたっぷりと載せた食事を、百合子は大きな口で頬張る。 「……百合子さんは、お肉が好きなんですね」  百合子の耳には浅倉文也のその...
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夏織(18)

<<はじめから読む! <17話  カッターをどうしようか。ポケットの中で、カチカチと刃を出し入れしながら考える。  引っ越し後の段ボールの解体のためだけに購入したものだ。使う機会も少ないだろうし、百合子の汚い血がついた物なんて、使う気にもな...
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夏織(17)

<<はじめから読む! <16話  昼休みの時間を狙い、夏織は元職場であるところの、市役所へと向かった。ソファには必要な書類を待つ市民の多くが、スマートフォンを片手に座っている。誰も、夏織を見咎めることはない。 「あれぇ? 古河さんじゃないで...
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夏織(16)

<<はじめから読む! <15話  夏織が大学を卒業し、役所勤めになり、一人暮らしを始めてからも、ずるずると彰との付き合いは続いた。アパートの家賃を支払えなくなった彰は、夏織の部屋でだらだらと過ごすようになった。  出会った頃は彼も大学生だっ...
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夏織(15)

<<はじめから読む! <14話  高校時代から、夏織はどうやったら男の気を引くことができるか、本能的に理解していた。  女子の友人たちの口癖は「彼氏ほしい」だった。そう言う口は、グロスで盛りすぎていて、可愛いというよりもむしろ、グロテスクな...
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夏織(14)

<<はじめから読む! <13話  二人暮らしはとても快適だった。夏織の体調が優れないときには、文也が家事を担ってくれる。  ただ、眠る前に文也が、夏織の腹をいとおしそうに撫でるのだけが、苦痛だった。腹はだいぶ大きくはなってきた気がするが、臨...
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夏織(13)

<<はじめから読む! <12話 「……ちょっと」  聞き慣れない声に、夏織は文也から離れて、顔を上げた。  部屋に突如現れたのは、文也よりも背の高い男だった。ぬぼーっと突っ立っている様子に、夏織は背筋に冷たいものを感じた。 「兄さん、俺の家...
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夏織(12)

<<はじめから読む! <11話  家の外に出ると、文也は「行かない」と言った離れに、どんどん近づいていった。 「ちょ、ちょっと! いいの? お義母さんに怒られるわよ?」  この声も母親に聞かれたらアウトだ。夏織は声を潜めて、文也の行動を咎め...
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夏織(11)

<<はじめから読む! <10話  七月に入り、夏織は退職した。手渡された花束は、皆がカンパして購入したものだと言っていたが、その「皆」の中に、百合子は入っていないのだろう。  それにしても、悪阻がこんなに辛いなんて思わなかった。退職していて...
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夏織(10)

<<はじめから読む! <9話  現在文也が暮らしているマンションに移るだけなので、準備にそう人手はいらない。  夏織の主張は通らなかった。妊娠してから、文也はとても過保護になった。まだ安定期じゃないんだから、と諭された。 「ごめんね、明美。...
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