不幸なフーコ

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ライト文芸

不幸なフーコ(36)

<<はじめから読む! <35話 「おい。野乃花。遅刻するぞ」 「遅刻するのは哲宏だけでしょ。私は余裕だもん」  自転車での道のりは、哲宏の学校の方が遠い。私はすでにショートカットルートを開拓しているのだ。もう少し遅くに出ても平気である。  ...
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不幸なフーコ(35)

<<はじめから読む! <34話  冬休み中に謝らなければならない人は、もうひとりいる。  青い顔をしていた私に、「ついていこうか?」と、哲宏が申し出たが、断った。私が向き合わなければならない問題だ。これ以上、哲宏を煩わせるわけにはいかない。...
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不幸なフーコ(34)

<<はじめから読む! <33話  思い立ったが吉日、私は風子の家に向かった。彼女の祖父母にどう思われているかわからなかったので、呼び出しは哲宏にしてもらった。 「天木、今は出かけてるって」  今日は朝から冷え込んでいて、空もどんよりと曇って...
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不幸なフーコ(33)

<<はじめから読む! <32話  次の日から、少しずつ私は、普通の生活リズムを取り戻していった。  朝起きて、昼に活動し、夜に眠る。その繰り返しは、どんな手段よりも、私の心と身体を正常な状態へと近づけていく。  朝食の席に姿を現した私を見て...
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不幸なフーコ(32)

<<はじめから読む! <31話  学校を休む理由のレパートリーって、実はほとんどない。 お腹が痛いとか、頭が痛いとか。  熱のあるなしは、体温計で測ればすぐに数値化されてバレてしまうが、痛みや気分は自分の感じ方の問題だから、誰も強く言えない...
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不幸なフーコ(31)

<<はじめから読む! <30話  文化祭二日目は、途中で帰ってしまった。当番もまだ残っていたのに、すべて投げ出した。具合が悪いとか、適当な理由をつけることはできた。  けど、電車の中でスマートフォンを片手に、誰に連絡をすればいいのか、わから...
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不幸なフーコ(30)

<<はじめから読む! <29話 「なんであんたがいるのよ!?」  ヒステリックに叫ぶと、周りにいた人たちが何事かとこちらを向く。そして目つきの悪い学ランの金髪男を視界に入れると、慌てて視線を逸らし、そそくさと逃げていく。  風子は周囲の様子...
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不幸なフーコ(29)

<<はじめから読む! <28話  一日目の土曜日は、校内の生徒しかいない。そこまで盛り上がるようなものでもなく、仲間内でやりとりした各模擬店の食券を使って飲み食いをしたり、自分の当番のときは、「いらっしゃいませー」と声を張り上げてみたりした...
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不幸なフーコ(28)

<<はじめから読む! <27話  文化祭までの日々は、長く感じられた。  普通はあっという間だった、というのだろうけれども、私は早く日常に戻ってほしかった。  風子のクラスに様子を見に行けば、ギャルたちがわざと聞こえるように、嫌味を言ってく...
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不幸なフーコ(27)

<<はじめから読む! <26話  真っ直ぐ家に帰らずに、哲宏の家に寄った。庭に自転車があるのを確認してから、ピンポンを押す。  インターフォンのカメラに私が映っているのが見えたのだろう。返事はなく、ただ、ガチャ、と鍵が開く音がした。 「お邪...
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