ライト文芸

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みんな愛してるから

夏織(5)

<<はじめから読む! <4話  こっちこっち、と手招きされて、夏織は小走りに駆け寄り、「ごめん! 遅れて!」と手を合わせた。 「ほんとよ。自分で遊ぼうって呼び出しておいて遅れるなんて。相変わらずね、夏織」  明美あけみはそう言って、紅茶のカ...
みんな愛してるから

夏織(4)

<<はじめから読む! <3話  翌朝、出勤してきた百合子を待ち構えて、文也は人目につかない場所へと呼び出した。  はらはらした思いで見守っているのは夏織だけではなかった。昨日の食堂での一件は、思った以上に目立っていたようで、文也と百合子の向...
みんな愛してるから

夏織(3)

<<はじめから読む! <2話  職場から離れた店を、夏織は指定した。同時に庁舎を出ては意味がないので、文也には悪いが時間を潰してもらって、夏織は先に出た。  バスに乗って、十分少々。待ち合わせの喫茶店に、先に入店する。  昼はいいが、夜はや...
みんな愛してるから

夏織(2)

<1話  四月の頭まで、転入ラッシュによる市民課の繁忙期は続いた。文也は福祉課所属で、五階で業務に励んでいるので、平日はスマートフォンでのメッセージのやり取りだけが、二人の恋人同士の触れあいであった。  本当は、昼休みに食堂で話すことができ...
みんな愛してるから

夏織(1)

「結婚を前提に、お付き合いしてください」  深々と頭を下げた男のつむじを、夏織かおりはぼんやりと眺めた。あ、二つある。なんて、どうしようもないことに気がつくのは、余裕があるからというよりは、現実味が薄いからだった。  夕暮れのビーチや、おし...
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業火を刻めよ(エピローグ)

<<プロローグから読む! <32話  自分の生きる時代に戻ってきたヒカルは、数日間医務室への入院をしたのちに、仕事に復帰した。幸い、桃子の幻覚は見えなくなっていた。 「奥沢巡査。初任務、ご苦労」  提出した報告書に目を通しながら、園田はヒカ...
ライト文芸

業火を刻めよ(32)

<<プロローグから読む! <31話  事件から数日が経過した。テレビや週刊誌での報道は、憶測が憶測を呼び、真実からは遠ざかっている。勿論それは、政府や警察による圧力によるものだった。ヒカルは黒田の家で、一人でそれを確認すると、息を吐きだした...
ライト文芸

業火を刻めよ(31)

<<プロローグから読む! <30話  ヒカルは口元を押さえた。うおおお、という信者たちの熱狂的な歓声が起きる前に、悲鳴を上げるところだった。  倒れ込んだ桃子は、まだぴくぴくと身体を痙攣させており、まだ生きているかもしれなかった。助けに行こ...
ライト文芸

業火を刻めよ(30)

<<プロローグから読む! <29話  儀式の時刻まで、あと十分。  ヒカルは黒田が入手した信者の正装に着替え、儀式の行われる部屋にいた。地下二階に相当する場所は、広い一つの部屋になっており、出家信者たちと、熱心な在家信者たちで隙間なく、埋め...
ライト文芸

業火を刻めよ(29)

<<プロローグから読む! <28話  重い扉の奥は、座敷牢だった。先ほどよりも、一段と空気が冷えたのを感じて、ヒカルは思わず身震いする。 「どうしてこんな」  独り言だったが、カイが親切にも答えをくれる。 「ここは、出家信者たちの修行場。己...
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