ライト文芸

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みんな愛してるから

百合子(7)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <6話  土曜の夜、百合子は軽い足取りで、例のバーにやってきた。  初来店時のことをマスターは覚えていて、微笑んでくれる。相変わらずダンディーだ。  カウンター席に座って、軽いカクテルを注文する。...
みんな愛してるから

百合子(6)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <5話  連休明け、百合子は失恋を吹っ切れたように、仕事に打ち込んだ。腫れ物に触れるように、「渡辺さん、これ……」と仕事を依頼してくる同僚にも、指導を請うてくる新人にも、百合子はにこやかに微笑んで...
みんな愛してるから

百合子(5)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <4話  青年はサトルと名乗り、人のいい笑顔を浮かべた。キラキラ輝いているその目は優しさに満ちていて、百合子はペラペラと思いのたけを話した。  何年にも渡る付き合いの友人たちには、下手なプライドが...
みんな愛してるから

百合子(4)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <3話  もともと連休は、文也と一緒に食べ歩きをしようと思ってあけていた。失恋の痛手を癒すべく、百合子は連日連夜、二人で行きたかった店に遊びに行った。  最初のうちは、それも楽しかった。短大時代の...
みんな愛してるから

百合子(3)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <2話  おやつを食べ、夕飯を食べ、それから夜食。購入した大量の食品を一日で食べきってしまったので、朝起きて歯を磨くと、吐き気が込み上げてきた。  無理矢理身体に鞭をうち、百合子は出勤した。はぁ、...
みんな愛してるから

百合子(2)

<<はじめから読む <1話  家に帰るなり、百合子はいつもよりも重い身体を、ベッドに投げ出した。  こういうとき、実家であれば、母が階下から「どうしたの?」と叫んでいただろう。  が、現在百合子は、遅まきながら一人暮らしを始めていた。勿論、...
みんな愛してるから

百合子(1)

<<はじめから読む! <「夏織」18話  ローストビーフにチャーシュー。それからチキンロールに、ステーキ。皿の上にたっぷりと載せた食事を、百合子は大きな口で頬張る。 「……百合子さんは、お肉が好きなんですね」  百合子の耳には浅倉文也のその...
みんな愛してるから

夏織(18)

<<はじめから読む! <17話  カッターをどうしようか。ポケットの中で、カチカチと刃を出し入れしながら考える。  引っ越し後の段ボールの解体のためだけに購入したものだ。使う機会も少ないだろうし、百合子の汚い血がついた物なんて、使う気にもな...
みんな愛してるから

夏織(17)

<<はじめから読む! <16話  昼休みの時間を狙い、夏織は元職場であるところの、市役所へと向かった。ソファには必要な書類を待つ市民の多くが、スマートフォンを片手に座っている。誰も、夏織を見咎めることはない。 「あれぇ? 古河さんじゃないで...
みんな愛してるから

夏織(16)

<<はじめから読む! <15話  夏織が大学を卒業し、役所勤めになり、一人暮らしを始めてからも、ずるずると彰との付き合いは続いた。アパートの家賃を支払えなくなった彰は、夏織の部屋でだらだらと過ごすようになった。  出会った頃は彼も大学生だっ...
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