ライト文芸

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みんな愛してるから

百合子(17)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <16話  窓から差し込む光のまばゆさに、目を開けた。でも、そうなるのが嫌で、寝る前には必ず、カーテンを閉めるようにしていることを、百合子はふと思い出した。  昨夜は忘れたっけ。そもそも開けた記憶...
みんな愛してるから

百合子(16)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <15話  翌土曜日、目を覚ました文也は、自室ではない場所で眠っていたことに、驚いていた。そして、部屋を見渡して、ぼうっと座り込んでいる百合子を見て、びくりと肩を揺らした。 「わ、渡辺さん……?」...
みんな愛してるから

百合子(15)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <14話  平和な街で起きた大事件も、すでに犯人が逮捕されていることもあって、すぐに風化していった。とはいえ、百合子はある意味当事者と言えなくもないので、その後の動向も窺っていた。  男が夏織の住...
みんな愛してるから

百合子(14)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <13話  翌日、夜になってから百合子は出かけた。たった一ヶ月ほど行かなかっただけで、店の扉は自分を拒絶しているように見えた。  初来店のときと同じくらい緊張して、店内を覗くと、マスターの笑顔が出...
みんな愛してるから

百合子(13)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <12話  夏織の葬儀に、百合子は参列した。涙は一ミリも流れなかったが、同僚の突然の死に、参加しないわけにはいかなかった。  古河の家の両親の隣で、文也は焼香を済ませた参列者たちに、頭を深く下げて...
みんな愛してるから

百合子(12)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <11話  その後、百合子は病院へ行き、診断書をもらった。だが、課長を通じて下されたのは、警察への通報は待てという命令であった。  あんな凶暴な女を野放しにしてはおけないと、百合子は主張したが、上...
みんな愛してるから

百合子(11)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <10話  夏織が退職した。中途半端な季節であったのと、彼女が妊娠しているということを鑑みて、特に送別会は開かれなかった。  元気な子供を産んでくださいね、とか、結婚おめでとう、という明るいメッセ...
みんな愛してるから

百合子(10)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <9話  それは百合子の記憶を呼び起こす、悪魔の囁きにも等しい。 「本当に、浅倉の子供なのかな……」  百合子に話しかけているというよりは、完璧に独り言だった。聞きとがめて、百合子の涙は引っ込んだ...
みんな愛してるから

百合子(9)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <8話  そんな職場でのやり取りを、百合子は週末のバーで、サトルに興奮気味に語った。 「壁ドンよ、壁ドン! さらっと壁ドンされたの!」  少女漫画で人気のシチュエーションは、百合子も勿論好んでいた...
みんな愛してるから

百合子(8)

<<はじめから読む! <この章のはじめから <7話  チャンスは翌週、すぐにやってきた。  昼休憩の直前に、課長に割り振られた資料のコピーを、百合子は許可を得て、夏織に回した。  本来、十枚あった資料の原本から、真ん中の二枚を抜き去った状態...
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