断頭台の友よ(77)

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76話

 そして、夜の闇が周囲を包み込んだ。窓から差し込む月明かりが眩しい。今夜は満月である。犯罪には向かない日だ。昨日だって明るかっただろうに、院長は少女を貪ることを我慢できなかったのだろうか。

 こちらとしては好都合だ。異変があれば、孤児院が見える家の二階を借りて見張っているオズヴァルトや、警戒して孤児院の見張りに立っている捜査官たちにもすぐに伝わるだろう。

 クレマンは、用意されたネグリジェにむずがゆさを感じながら、ベッドに寝転んでいた。腕の中にはクリスティンが丸くなっている。やはり薬でも入っていたのか、彼女は夕飯を食べたあと、すぐに眠気を覚えていた。

 一応彼女にも、襲われたときの対処法は伝授しておいたが、やはり自分がなんとかするしかない。身体つきを変えるため、胸につけた女性用の下着に詰めた「あるもの」を、出しやすいように調整して、目を閉じてしばらく待った。

 どれほどの時間が経過しただろうか。消灯後も、職員たちが見回りをしたり夜の雑務をするのに歩いている音や気配がしていたが、それも絶えて久しい。

(来た)

 意識がはっきりしているため、視界を閉ざすとその分、聴覚が研ぎ澄まされる。いくら注意深く歩いても、あの巨体が音もなく移動できるはずもない。孤児院自体もだいぶガタが来ているため、どうしても廊下が軋む。

 そして、クレマンたちの部屋の前で立ち止まる。中の様子を伺っているのだろう。嫌な緊張で、心臓の音が速まる。落ち着け。落ち着くんだ。言い聞かせながら、クレマンはひたすら恐怖と興奮を噛み殺し、寝たふりを続ける。

 やがて、ろうそくの灯りとともに扉が開いた。来た。クレマンは不自然にならない程度に寝返りを打って、クリスティンと少しだけ、距離を離した。

 見回りに来て、安全を確認しただけだと言い張られてはすべてが無駄になる。先に自分に手を出してくれればいいが。

 クレマンの願いむなしく、黒い影は小さな少女の身体に手を伸ばした。オズヴァルトが「あの子は売れる」と言ったクリスティンの肉体を、これまで堪能してこなかったことを、後悔しているのかもしれなかった。処女をいただいてしまえ。その焦りが、彼女に向かっている。

 薄目を開けて、クレマンはじっと機会を見計らう。どのタイミングで男にこの武器を使い、制圧すべきか。しっかりと見極めなければならない。

 男の舌が、ぐっすりと眠る少女の頬をベロベロに嘗めていく。汚い。気持ちが悪い。もうこの時点で取り押さえてもいいのではないか。そう思ったクレマンだったが、まだ動けない。

 クリスティンの寝間着が暴かれていく。凹凸のまるでない肢体を撫で、硬い蕾のような乳首を指で摘まみ上げる。男の手が下肢に伸ばされ、下着に手が入りそうになった瞬間、クレマンはこみ上げてくる吐き気とともに、がばりと起き上がった。

78話

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