薔薇をならべて(19)

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18話

 三十分の仮眠でだいぶすっきりした香貴を連れての買い付けは、まずまずの結果であった。

 町の花屋には、いつもの花プラスアルファがちょうどいい。今の時期だとチューリップが盛りだ。赤、白、黄色にピンクといった、誰もがイメージする色の他に、海外から珍しい種類があれば少しだけ買う。週に一度は切り花を購入するような常連客は、こういうあまり見たことのない花が好きだ。

 仏壇の花用には、菊だけじゃなく、華美にならない程度に季節の花を入れる。枝物もいい。春なら桃や桜、正月なら赤い実をつけた南天。花を飾る習慣のない人でも、仏壇には飾る。そこで季節の移ろいを感じてもらいたくて、やっていることだ。

 店に戻ると、ちょうど時間通りに母が店の清掃を終え、外に出てくる。

「ただいま」

 開店準備は、時間との勝負だ。花はナマモノ中のナマモノ。冷凍するわけにはいかない。車から順番に出して、処理をする。もちろん、強い体の植物ばかりではない。少し力を入れただけで折れたり潰れたりして、売り物にならなくなる。

 素人の香貴には、荷下げを手伝ってもらう。コンテナが店先に下ろされるやいなや、種類ごとに水揚げから開始する。

「湯揚げはする?」

「もういいんじゃない? だいぶあったかくなってきたし……」

 寒い時期には、人間と一緒で、植物も固く、水を吸い上げる力が弱まるため、沸騰した湯の中に一分間、茎の先端をつける。そうすることによって、水の通り道の空気が抜ける。

「枝物は香貴と一緒にやるわ」

「よろしくー」

 小さな店だ。長年花屋を営んできた母に任せておいても大丈夫だろう。今日は根を焼く(そうすると、焦げた部分がフィルター状になる)必要のある花はなさそうだし。

「香貴。俺らこっち」

「はい!」

 目まぐるしく動く藤正親子の邪魔にならないように、隅で小さくなっていた香貴を呼ぶと、仕事をさせてもらえるのだと喜んでついてくる。たまに尻尾の幻覚が見えるときがあって、涼は目を擦った。

20話

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