恋愛詐欺師は愛を知らない(13)

スポンサーリンク
服 BL

<<はじめから読む!

12話

 ピンク色の毛玉は、薫の部屋の一部になっている。その後のデートで手に入れた、ささやかな土産物も、きちんと棚に飾ってある。そのひとつひとつに思い出が詰まっている。

 きっかけはぬいぐるみという、些細な物だったけれど、あの日からデートは、姉の命令だから、という義務ではなくなったのだ。一緒にいると楽しいから、自ら遼佑をデートに誘うことだってあった。

 遼佑のことをもっと知りたいと思った。好みの男とできて役得、と思っていたキスが、もっと胸をときめかせるものになった。

 騙し騙されの関係だけでなくなったのは、いつからなのかもう、薫には思い出せない。明確な境目があったわけではなくて、グラデーションのように、空気は変化していった。

 そう考えて、薫の中に初めて、本当の意味での罪悪感が生まれた。楽しい、嬉しいと思っていたのに、それを直接遼佑に伝えることはなかった。それだけじゃなく、姉に言われるがままに、弄んだ。

 本当はもっと早くに、気づいているべきだったのだ。遼佑に好意を抱いているのだ、と。そして真実を語るべきだったのだ。説得する言葉を持たない、子供ではないのだから。

 遼佑と話がしたい。強烈にそう思った。心から謝りたいし、遼佑に恋をしているのだと、伝えたかった。

 しかし電話をかけても、彼は出てくれないだろう。だったら別の手段を行使するまでだ。

 薫はベッドから起き上がった。なんとなく、身体が軽くなった気がする。すぐに姉の部屋へ行き、ドアをノックする。

「なに、どうしたの?」

 扉を開けたら、真剣な表情をした弟がいたからだろう。静は戸惑いの表情を浮かべた。

14話

ランキング参加中!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村 小説ブログ 小説家志望へ
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ



コメント

タイトルとURLをコピーしました