年下攻め

＜＜はじめから読む！ ＜11話 　それから、毎日仕事終わりに香貴の家に出向き、花瓶の花の手入れをする日々が続いた。さすがに延命剤の量については口を酸っぱくし、「腹いっぱいのところに、大量にステーキ持ってこられたらどうなる？」という例え話も効...

＜＜はじめから読む！ ＜10話 「バラが痛いって言ったのかよ」 　鼻で笑うと、さすがの香貴もムッとした。「言わないけど！」と、声を荒らげる。 　子供じみた感傷だな、と涼は冷めた目を向ける。 　野で可憐に咲く花こそがあるべき姿で、手折るのは人...

＜＜はじめから読む！ ＜9話 　言ったとおりにすれば、バラの花は一週間はきれいな状態を楽しめるはずだった。しかし、三日後に連絡をしてみれば、香貴は浮かない声。一方的に涼の話を聞き、頷くばかりだ。 　怪しい。 　ピンと来た涼は、一段階声を落と...

＜＜はじめから読む！ ＜8話 　母と相談した結果、まずは切り花を飾るところから始めたらどうか、という話になった。 　確かに、いちから育てるよりもハードルが低いし、早晩必ず枯れることはわかっているから、心的ダメージも小さい。切り花を長持ちさせ...

＜＜はじめから読む！ ＜7話 　店に戻ると、母が香貴を待ち構えていた。彼の仕事との兼ね合いで、閉店後に出張をするはめになった息子については、「お疲れ様」の一言もない。 「いらっしゃい、香貴くん」 「お母さん、お邪魔します。これ、どうぞ」 　...

＜＜はじめから読む！ ＜6話 「サボテンもダメ、だと……？」 　つい二週間前に渡した鉢植えのサボテンが、死体の仲間入りをしていた。 　繁殖力抜群で、俗に「悪魔」とすら呼ばれるミントをダメにしたとき、「もうそろそろ、舞台本番で……」と、言い訳...

＜＜はじめから読む！ ＜5話 　部屋は家政婦が来て、定期的に掃除をしているのだろう。この男に完璧な整理整頓は、無理だ。短い時間しか接していなくても、わかる。 　涼を激昂させたのは、窓際に並んだ大小の植木鉢。並びは整然としているが、すべて枯れ...

＜＜はじめから読む！ ＜4話 　目的地周辺です、と女性的な機械音声が告げる。周辺って、と見回した涼の目に映るのは、ずっと続いている壁であった。 「あ、玄関はもうちょっと行ったところです」 「って、これ全部あんたんちかよ！」 　彼の言う玄関は...

＜＜はじめから読む！ ＜3話 　錦織香貴、職業・俳優。 　誰もが知る公式プロフィールは以上だが、ガーデニング趣味のある人間ならば、もうひとつ知っていることがある。 　彼は教育テレビで絶賛放送中の「ガーデニングびより」という園芸番組のナビゲー...

＜＜はじめから読む！ ＜2話 　自転車を積み込み、ぐったりした青年を助手席に乗せた。帰り着いた自宅では、連絡を受けた母親が待ち構えていた。 　青年よりも、花屋の力仕事を長年こなしてきた母の方が、圧倒的に逞しかった。涼が靴を脱ぐ間、支えるのを...