薔薇をならべて(12)

スポンサーリンク
BL

<<はじめから読む!

11話

 それから、毎日仕事終わりに香貴の家に出向き、花瓶の花の手入れをする日々が続いた。さすがに延命剤の量については口を酸っぱくし、「腹いっぱいのところに、大量にステーキ持ってこられたらどうなる?」という例え話も効いたのか、用量を守るようになった。毎日水を替えたそうにはしていたが、これもなんとか抑え込んでいる。

 ただ、一センチずつ茎を切るという作業だけは今も、痛ましい目で涼の手つきを見守っている。バチン、とハサミが大きな音を立てるときには、見ていられないとばかりに、ぎゅっと目を瞑る。

 先はまだ長いな。遠い目をしていたら、香貴が今思い出したとばかりに、

「明日から小屋入りで、帰り遅くなるから、来なくて大丈夫」

 と言う。

 お前、そういうことはもっと早く言え! と、涼は彼の頭を小突く真似をする。あくまでもフリだ。舞台本番まで間もないのに、せっかく頭に入れたセリフが飛ぶようなことはできないという、なけなしの気遣いであった。

「そんなら、今日は花、持ってこなかったのに」

 ぶちぶち言いながら、せっかく準備した花を再びまとめ、紙にくるくる包んで持ち帰ることにした。活けてもらってもいいのに、と香貴は言うが、ここは師匠として譲れない。

「お前、仕事に集中すると自分のことすらおろそかにするんだから、花の世話なんてできるわけがねぇだろ」

 何せ、出会いが行き倒れたところを拾われたなどという、情けない姿なものだから、香貴に反論の余地はない。

「うう。でもバラ……」

「劇場にいっぱい贈られてくんだろ」

 小さく呻いてしょぼくれる彼の頭をポンポンと撫でて慰めながら、涼の脳裏にはちょっとしたいたずらのアイディアが浮かんでいた。

13話

ランキング参加中!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村 小説ブログ 小説家志望へ
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ



コメント

タイトルとURLをコピーしました