右手じゃ足りない(エピローグ)

スポンサーリンク
手 BL

<<1話から読む!

17話

 エアコンから吹いてくる涼しい風が、汗でべたついた身体をいたわった。ベッドの上でくっついていても、不愉快ではない。

 祥郎は飛鳥の髪の毛を一房ずつ手に取って、口づける。頭のてっぺんから爪先まで、飛鳥のすべてが愛おしくて、祥郎は自分の行動が恥ずかしいものだと理解はしていたが、やめられなかった。

「右手は卒業、だな」

 ぽそりと零して、飛鳥の耳たぶを食む。ぽーっと祥郎にされるがままだった飛鳥は、「右手……?」と呟くと、一気に覚醒したように、祥郎に視線を向けた。

「ん?」
「あ、あの。先輩」

 恥じらいに頬をほんのりと上気させた飛鳥は、言おうか言うまいか逡巡している。

「どうした?」

 優しく促すと、彼は意を決して、祥郎の耳に手を添えて囁く。二人しかいないのに、内緒話の格好である。

「僕、本当は、左利きなんです」

 と。

 照れるような内容か、とか、そもそもそれは重要なことじゃないし、今更告白するようなことでもないわけで。

(天然か)

 祥郎は、飛鳥の手首を捕まえた。

 どうでもいいことを、照れながら告白する飛鳥は……ただひたすらに、可愛いだけだった。

「……もう一回、いい?」

 祥郎の誘いに、飛鳥は二度、三度と目をぱちぱちと瞬かせると、鮮やかに微笑んで頷き、祥郎の首に、腕を絡ませた。

(おわり)

ランキング参加中!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村 小説ブログ 小説家志望へ
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ



コメント

タイトルとURLをコピーしました